女の日記 林芙美子

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 1946年4月、八雲書店から復刊された林芙美子の長篇小説。元版は第一書房(1937年)。

 

 ヘッセの言葉のなかに「人間と云ふものは實に妙なものである。たとへば新しい生活に、滿たされた希望のたゞなかにありながら、孤獨に對し、否それのみかつれづれと空虚な日々に對し、不思議にも刹那的な、たゞかすかに模糊として感じられる郷愁にしばしば襲はれるものである」と云ふのがありましたが、この思ひにたゞよふてみるみるやうな人間的な郷愁を、私はしみじみと感じとる事が出來ます。ながいあひだ、私たちはこの郷愁すら忘れがちな生活でした。戰爭と云ふ怖ろしい魔物にとりつかれて、私たちは慘酷なほどみじめな長い年月をすごしてきました。この戰爭をよく耐えて生きてこられたものだと思はずにはいられません。この敗戰はまたと得がたく尊い記念だとおもひます。枯れきつてゐた文化のさそひ水のやうな氣がします。あふれるやうな甘美な音樂や、正直に素直に書かれた文學や繪畫、あらゆる自然人類の美しいものに、私たちは心を波立たさせています。人類の郷愁であるところの眞理を求めるこゝろをいまこそ私たちは、さえぎられることがなく求めることが出來るのです。人を人がきづつけあふことなく、あたゝかいこゝろでよりそひたいものと念じてゐます。この『女の日記』は十年前の作品ですが、この作品は言はば筆者の郷愁のやうなものです。暫く京都に住んでゐましたので、京都の自然風物を描いてみたくおもっていました。長い戰爭がつゞき、もう再びこのやうな作品は世のなかに出てゆくこともあるまいとあきらめてゐたものだけに、この出版はたとへやうもなくうれしいものです。若い人たちのなかに、この作品のなかから共感を呼ぶものがありとすれば筆者の幸福これにするものはありません、消極的な、熱情のない文學なんてつまらないと思います。血みどろな文學心を藝術の神樣に與えて下さい。
(「序」)より

 


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懐疑 串田孫一

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 1942年11月、理想社から刊行された串田孫一(1915~2005)の哲学者評伝集。

 

目次

  • 1 懷疑思想家一覽
  • 2 サンチェス 其の他
  • 3 モンテェニュ
  • 4 シャロン
  • 5 デカルト
  • 6 パスカル
  • 7 ベイル 其の他
  • 8 懷疑主義眇論

 

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日本現代詩大系 第十巻 昭和期

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 1953年4月、河出書房から刊行された現代詩アンソロジー。編集は中野重治、柳澤棟三郎。扉字は草野心平、表示意匠は坂本繁二郎、函装幀は恩地孝四郎。画像は函欠。


目次

  • 色ガラスの街抄(尾形龜之助)
  • 秋の瞳抄(八木重吉
  • 貧しき信徒抄(八木重吉
  • 夏館抄(岡崎清一郎)
  • 韜晦乃書抄(岡崎清一郎)
  • 第百階級抄(草野心平
  • 母岩抄(草野心平
  • 蛙全(草野心平
  • 定本蛙抄(草野心平
  • 絶景抄(草野心平
  • 逸見猶吉詩集抄(逸見猶吉)
  • 血の花が開くとき抄(大江滿雄)
  • 日本海流抄(大江滿雄)
  • 叛く抄(竹内てるよ
  • 花とまごころ抄(竹内てるよ
  • 瑞枝抄(黄瀛)
  • 貧時交抄(菊岡久利)
  • 時の玩具抄(菊岡久利)
  • 懸崖・荒地抄(菱山修三)
  • 望郷抄(菱山修三)
  • 豐年抄(菱山修三)
  • 夢の女抄(菱山修三)
  • 亞寒帶抄(石川善助)
  • 海に投げた花抄(上田靜榮)
  • 歴程詩集抄(平田内藏吉・松永延造・三ツ村繁藏)
  • 花咲く日抄(山本和夫
  • 天地の間抄(藤原定)
  • 淵上毛錢詩集抄(淵上毛錢)
  • ひとつの道抄(草野天平
  • 桃李の路抄(岡田刀水士)
  • 谷間抄(岡田刀水士)
  • 瀧抄(岡本彌太)
  • 體溫抄(間野捷魯)
  • 地貌抄(島崎曙海)
  • 横田家の鬼抄(及川均)
  • 第十九等官抄(及川均)
  • 原始抄(池田克己)
  • 池田克己詩集抄(池田克己)
  • 戰場歌抄(佐川英三)
  • 竹槍隊抄(宮崎讓)
  • 神抄(宮崎讓)
  • 音樂に就て抄(上林猷夫
  • 合辯花冠抄(和田徹三)
  • 樹木派抄(高見順
  • 種薯抄(更科源藏)
  • 凍原の歌抄(更科源藏)
  • 北緯五十度詩集抄(眞壁仁・中島葉那子・葛西暢吉・更科源藏)
  • 街の百姓抄(眞壁仁)
  • 青猪の歌抄(眞壁仁)
  • 斷層抄(淺井十三郎)
  • 越後山脈抄(淺井十三郎)
  • 火刑臺の眼抄(淺井十三郎)
  • 風抄(田村昌由)
  • 北方の曲抄(大谷忠一郎)
  • 樂章抄(眞田喜七)
  • 耕治人詩集抄(耕治人
  • 水中の桑抄(耕治人
  • 半島の歴史抄(杉浦伊作)
  • 聖歌隊抄(中野秀人)
  • 緑の左右抄(殿岡辰雄)
  • 異花受抄(殿岡辰雄)
  • 曼珠沙華抄(藤村雅光)
  • 薔薇夫人抄(中村千尾)
  • 高原を行く抄(竹村浩)
  • かひつぶりの卵抄(中田忠太郎)
  • 足跡抄(明日田彌三夫)
  • 雲抄(黒田秀雄)
  • 文魚抄(小島敏雄)
  • 雪あかりの路抄(伊藤整
  • 冬夜抄(伊藤整
  • 北の貌抄(佐伯郁郎
  • 極圈抄(佐伯郁郎
  • 高原の歌抄(佐伯郁郎
  • 木苺抄(山本信雄)
  • 村の外抄(村上成實)
  • 北方の詩抄(高島高)
  • 山脈地帶抄(高島高)
  • 北の貌抄(高島高)
  • 左川ちか詩集抄(左川ちか)
  • 羊城新鈔抄(中山省三郎)
  • 縹緲抄(中山省三郎)
  • 豹紋蝶抄(中山省三郎)
  • 青狐抄(火野葦平
  • 夜の聲抄(藤田文江)
  • 白鳥抄(丸山豐)
  • 未來抄(丸山豐)
  • 窓抄(川田總七)
  • 檢温器と花抄(北川冬彦
  • 戰爭全(北川冬彦
  • 氷抄(北川冬彦
  • いやらしい神抄(北川冬彦
  • 園抄(瀧口武士)
  • 軍艦茉莉全(安西冬衞)
  • 大學の留守抄(安西冬衞)
  • 韃靼海峽と蝶抄(安西冬衞)
  • 罠抄(村野四郎)
  • 體操詩集抄(村野四郎)
  • 抒情飛行抄(村野四郎)
  • 珊瑚の鞭抄(北園克衞)
  • 白のアルバム抄(北園克衞)
  • 若いコロニイ抄(北園克衞)
  • 圓錐詩集抄(北園克衞)
  • 鯤抄(北園克衞)
  • 夏の手紙抄(北園克衞)
  • 火の菫抄(北園克衞)
  • 風土抄(北園克衞)
  • 青魚集抄(長田恆雄)
  • 朝の椅子抄(長田恆雄)
  • 朱塔抄(長田恆雄)
  • 化粧室と潛航艇抄(折戸彫夫)
  • 記號と秩序抄(杉本駿彦)
  • EUROPE抄(杉本駿彦)
  • 山中散生詩集抄(山中散生
  • エスタの町抄(渡邊修三
  • ペリカン嶋抄(渡邊修三
  • 青の祕密抄(岩本修造)
  • 喪くした眞珠抄(岩本修造)
  • 萬國旗抄(近藤東)
  • 紙の薔薇抄(近藤東)
  • ボヘミヤ歌抄(福原清)
  • 春の星抄(福原清)
  • おそはる抄(山村順)
  • 空中散歩抄(山村順)
  • 花火抄(山村順)
  • 海市帖抄(笹澤美明
  • 蜜蜂の道抄(笹澤美明
  • 思想以前抄(安藤一郎)
  • 靜かなる炎抄(安藤一郎)

解説 中野重治
作者作品及び起句目次


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ある微笑 私のヴァリエテ 牛島春子

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 1980年10月、創樹社から刊行された牛島春子(1913~2002)の散文集。著者自装。

 

 今年(一九八〇年)の八月、私は中国東北区の長春に旅をすることができた。三十四年ぶりだった。私は駅前の宿から八キロ余りの道のりをテクテク歩いていった。そしてかつて自分の住んでいた家が今もそのまま其処にあり、中国人の家族が住んでいるのを見て、なんともいえず感動し、私のなかで一つのものが静かに終ったのを感じた。
 今度、私はその戦後の三十年余の自分の小さな足跡を、いくらか羞かしい思いをしながらやっとふり返えることにした。旧満州にいたときいくつか小説を書いてはいたものの、引揚げてきたばかりの私は、まるで他国人のように日本の様子はわからなかった。それにまず食べることを考えねばならなかった。そんなとき、ある日突然新聞社の人たちの訪問を受けてあわてた。わからないながら求められると書きしている内に月日が経ち、日本は政治も社会も移り変ってきたが、私は自分なりに考えて書いてきたと思う。
 ここに蒐めたものの大部分は「西日本」「フクニチ」「毎日」「朝日」「読売」の各新聞に載ったもので、ルポルタージュは「新週刊」「婦人画報」にも書いた。二十枚以内の短篇は「芸林間歩」「九州文学」などに書いた。
 新聞が半枚、裏表二面しかなかった頃、テレビが今のように普及する前、優れた映画が沢山上映されて、私たちの心を潤してくれていた頃、才能のある戦後育ちの女性たちが輩出するすこし前――そうした時代から書いてきたものである。
(「あとがき」より)

 

目次

  • 引揚者の絵葉書
  • 書けざるの記
  • 三児を連れて
  • 重たい鎖
  • ある微笑
  • わたしの戦後
  • 父祖の地笠原
  • 福寿草

  • 一日精神病院長になって
  • ある結婚通知
  • 夢について
  • デイモン
  • 庭との対話
  • 夏の感傷
  • 早春の感覚
  • 梅におもう
  • 初夏の感想
  • 樹木の命
  • 母ネコ
  • 亀と私
  • 冬について
  • ばらの枕
  • 動物園で
  • BIKO追悼
  • 着物への郷愁
  • 並んでいます
  • タクシーにのって
  • 旅の目
  • 三枚の人生
  • めだか
  • 若い陶工
  • 裁判
  • 友一人
  • キリスト
  • ある暑い日に
  • ”人間万事……”
  • 明けゆく農村
  • 酔っ払いは悲しからずや
  • おばあさん
  • 韓国の女性
  • 白衣
  • 筍の世代
  • 一椀の牛乳
  • 「ぬけられます」
  • 日南の旅から
  • 思い出の旅
  • 博多・大橋
  • わが町
  • 冬の柳河
  • 私の故郷の味

  • ゴルゴタの丘」 
  • 「ガラスの城」 
  • 「もず」 
  • 「灰色の服を着た男」 
  • 「殺意の瞬間」 
  • 「夜の河」 
  • 「終着駅」
  • 王様と私」 
  • カビリアの夜」 
  • 「体の中を風が吹く」 
  • 追想」 
  • 「素直な悪女」 
  • 「愛情の花咲く樹」 
  • 「青い潮」 
  • 「土砂降り」 
  • 白い恋人たち」 
  • 「六條ゆきやま袖」 
  • 「情事」 
  • 「白い牙」 
  • 「二人だけの窓」 
  • 「スパイ」 
  • 「女」 
  • 山麓」 
  • 「若者はゆく」 
  • 音楽映画について

  • 火山灰地の女たち 
  • ひきさかれた三池 
  • 黒い羽根の地帯を行く 
  • 狂った日々――ある習作 
  • 少女 
  • 馬吉 
  • ピストルとあめ玉 
  • ある街角で
  • 山の宿
  •  せせらぎ
  •  夕立
  •  浴室
  •  夜

あとがき

 

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昭和の終焉 20世紀諸概念の崩壊と未来 辻井喬 日野啓三対談集

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 1986年9月、トレヴィルから刊行された辻井喬(1927~2013)と日野啓三(1929~2002)の対談集。装幀は戸田ツトム、写真は立花義臣。

目次

  • Part1
  • Part2
  • Part3

あとがき
著作リスト


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大手拓次曼荼羅 日記の実像 斎田朋雄

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 1996年10月、西毛文学社から刊行された斎田朋雄(1914~2012)による大手拓次研究書。


目次

  • はじめに
  • 《明治三十八年 1905年 十八歲〉
  • 〈明治三十九年 1906年 十九歲〉u 
  • 〈明治四十年 1907年 二十歲〉
  • 〈明治四十一年 1908年 二十一歲〉
  • 〈明治四十二年 1909年 二十二歲〉
  • 〈明治四十三年 1910年 二十三歲〉
  • 〈明治四十四年 1911年 二十四歲〉
  • 〈明治四十五年~大正元年 1912年 二十五歲〉
  • 〈大正二年 1913年 二十六歲〉
  • 〈大正三年 1914年 二十七歲〉
  • 〈大正四年 1915年 二十八歲〉
  • 〈大正五年 1916年 二十九歲〉
  • 〈大正六年 1917年 三十歲〉
  • 〈大正七年 1918年 三十一歲〉
  • 〈大正八年 1919年 三十二歲〉
  • 大正九年 1920年 三十三歲〉
  • 〈大正十年 1921年 三十四歲〉
  • 〈大正十一年 1922年 三十五歲〉
  • 〈大正十二年 1923年 三十六歲〉
  • 〈大正十三年 1924年 三十七歲〉
  • 〈大正十四年 1925年 三十八歲〉
  • 〈大正十五年 昭和元年 1926年 三十九歲〉 
  • 〈昭和二年 1927年 四十歲〉
  • 〈昭和三年 1928年 四十一歲〉
  • 〈昭和四年 1929年 四十二歲〉
  • 〈昭和五年 1930年 四十三歲〉
  • 〈昭和六年 1931年 四十四歲〉 
  • 〈昭和七年 1932年 四十五歲〉
  • 〈昭和八年 1933 年四十六歲〉
  • 〈昭和九年 1934年 四十七歲〉

大手拓次 年譜
大手拓次の詩と生涯を照射――”大手拓次曼陀羅”の意味するもの――森菊藏


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永瀬清子 井坂洋子

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 2000年11月、五柳書院から刊行された井坂洋子による永瀬清子の評伝。装幀は東幸央。カバー作品はイケムラレイコ「両手を口に入れながら」。

 

 永瀬清子の詩やことばは、生きることを引き換えとするような熱のこもりと、格闘がある。それに向き合うほどの力が自分にはない、資質もちがうと、なにも言えない状態が長く続いた気がする。
 だが、彼女は、もともと霊感のつよい詩人であり、創られた数々の作品も、発端はそこなのだと思ったときから、身近な存在となった。
 また、本文に書き入れそこねてしまったが、永瀬家には代々つたわるお炎の治療というのがあって、村人たちは随分と清子に救われたらしい。
 そのことは、直接に彼女の作品とはつながらないのだが、人体の闇、創作の闇に火を灯す巫女のようなイメージが浮かんできて、私の遅筆をあと押ししてくれた。どこか一点、今は亡き彼女とつながっている思いがしていた。
(「あとがきにかえて」より)

目次

  • 第一章 「コーヒーの進軍ラッパ」が鳴る時
  • 第二章 流れるごとく書けよ
  • 第三章 「あなた」の向こう側へ
  • 第四章 認識の刺
  • 第五章 女詩人のさえずり

永瀬清子略年譜
あとがきにかえて

 

関連リンク

永瀬清子「その時あなたが…」(YOMIURI ONLINE)
永瀬清子の誕生日、そして命日であるこの日(たりたの日記)

 

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