小さな町 山本沖子詩集

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1995年10月、踏青社から発行された山本沖子の第五詩集。

 昭和二十二(一九四七)年に、三好達治先生のご尽力で、大阪創元社より最初の詩集『花の木の椅子』が出版されましてから、半世紀近くが経ちました。そのあいだに数冊の詩集を出してきましたけれども、このたび、おそらく私の最後の詩集になるだろうと、ふと胸の底に感じられる『小さな町』を出版することになりました。

「小さな町」というのは、私の郷里、福井県小浜市のことです。私はもう四十年以上も郷里へ帰ったことがありません。だから、私の「小浜」は四十年以上も前の遠敷郡小浜町なのです。そしてまた、少女のころ愛読していたシャルル・ルイ・フィリップのコント集『小さき町にて』や『母への手紙』とも重ね合わせてきた「小さな町」なのです。

 昔の小浜は、湖のように見える深く湾曲した入江の海と山とのあいだに、一筋の帯のように延びていた小さな町でした。町を貫いている一本の街道から分岐している道や路地はすべて、ゆるやかな坂道で海の方へ向かっていました。晴れた日の夕方に路地の入口に立つと、海の落日がひときわ大きく輝いていて、あたりにはお風呂屋さんの煙突のけむりや魚屋さんの魚を焼くけむりがうす青くただよっていました。(「あとがき」より)

 

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