平凡 井川博年詩集

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 2010年8月、思潮社から刊行された井川博年の第9詩集。

 この詩集のタイトルとなった『平凡』は、もとより二葉亭四迷の「平凡」からとったものです。二葉亭にかぎらず今回は、林芙美子尾崎翠に始まって、小泉八雲石川啄木、生田春月、佐藤春夫と、とっくの昔に死んだ詩人のオンパレードです。意図した訳ではなく好きな詩人を追っかけているうちに、こういうことになりました。
 しかし子供の頃から読んでいた啄木や八雲ばかりでなく、最近読んだといっていい林芙美子尾崎翠も、いずれの人たちも、すべて私に、「文学とはなにか」、「人生いかに生きるか」を教えてくれた大恩人たちです。私はこれらの人たちから、生きるすべてを学んだといっていい。今回の詩集では、そのことに対する私からの感謝の気持ちを伝えたかったのです。
 それと同時に、これら先人たちの書いたものにフレ、それへの一方的な会話(私の独り言)を書くことによって、私の中にあった、いろいろな「しがらみ」から解放されたことも事実です。しかも、これらの人たちが居るならば、私を愛してくれた(である)父母や、多くの友達が居るならば、死ぬこともこわくない、ような気分になりました。またすぐ気が変わるにちがいありませんが……(「あとがき」より)


目次

  • 芙美子さん、翠さん
  • 下馬物語
  • バスに乗って
  • 村の製材所
  • 朝寝坊
  • 九官鳥
  • 秋の寺
  • 語らい
  • 雀の朝
  • 八つ当たり
  • つつがなきや
  • ちんどん屋
  • つつがなきや2
  • 那須への手紙
  • われわれはみなマイナー・ポエットである
  • 渋民村
  • 八雲の耳
  • 母の眼鏡
  • 湯気を見ながら
  • 佐藤春夫」の服

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紹介記事
「情けない」詩人の非凡 井川博年の新作詩集、哀歓深く(朝日新聞)