1995年10月、思潮社から刊行された瀬尾育生(1948~)の第5詩集。第26回高見順賞受賞。
これが、私がこの七年間に書いた詩のすべてである。私の中心で私自身として、波のように打ち返されているものがあってもそれは私のものではなく、つぎつぎと私の名で呼ばれ、ふりかえるものがあってもそれは私のものではなく、何度その名を言いあてられても、別の命名を呼び寄せながら回帰してくる姿があってもそれは私のものではなく、しかし、それが「自分」だ。「自分」からゆっくりと返ってくる答えを待ち続けるような時間が流れた。いくるかの刻み目と、そういってよければいくつかの奇跡が、私の手のなかに残された。
『現代詩文庫107 瀬尾育生詩集』に未刊詩集「DEEP PURPLE」として収められたものに、その後書かれた六篇を加えて一巻とした。
(「後記)より)
目次
- 月蝕
- 趨性
- 中世
- 白粉
- 緑色
- 土星
- 北海
- 多数
- 二時
- 欧州
- 棲家
- 労働者
- 解纜
- グローデク
- 棘皮
- 数年
- 口述
- 交換
- 耳鳴