1978年5月、思潮社から刊行された吉原幸子(1932~2002)の第7詩集。
飛行機を操縦できないから、私にとつて”夜間飛行”とは、むろん、”夢”のことである。
昼は飛べない。夜も、あまり飛べなくなつた。だが、夢のなかのある部分には、かつて踏みきつたきり、まだ空中をさまよつてゐる足がある――死者たちと。
白昼の、地上を歩く足と同じくらゐ、それを大事にしたいと思つてゐる。
普通名詞だからと、あへてこのタイトルを冠せたが、同名のサン・テグジュペリの小説と、ゲランの香水と、どちらが連想され易いのだらうか。
香水はごくたまにしか使はないけれど、私の嗅覚は、<夜間飛行(ヴォル・ド・ニュイ)>よりランヴァンの<私の罪(モン・ペシエ)>という名の匂ひを、若い頃から好んだ。(「NOTE」より)
目次
Ⅰ
- 夜間飛行
- 翅
- 鳥よ
- 夜のとんねる
- 雨なのに
- 死ぬ海
- 発光
- ことばは……
- 盲目
- 花火
- 青春
- 挨拶
Ⅱ
- をとこ
- をとこ
- をんな
- 猫二篇
- ゐない
- ゐる
- 出会ひ
- 念仏
- 舞台装置
- 選択
- へんな夢
- 黄昏
- うた
- 十一月
- 慶州からソウルへ
- 粉雪の街で
Ⅲ
- 鈍痛
- さらば地球よ
- 手
- 報告
- 砂
- 虚像
- 日常
- 血縁
- ある通夜
- あの朝のやうに