1984年9月、北国出版社から刊行された水芦光子(1914~2003)の第二詩集。水芦は室生犀星の初女弟子。跋文は永瀬清子。
室生犀星という方はおそろしい方である。
終戦よ奥年の昭和二十一年に上梓した私の詩集「雪かとおもふ」に、先生は序文をよせられたが、終わりの方で「処女詩集が出ると、どういう人でもその後の詩がまずくなる。処女詩集が出てまずくならない詩人だけが本統の詩人になるのではなかろうか」そして「処女詩集はたいてい悲惨な命運をになうよう約束されている」と結んで居られる。それから三十八年、一冊の詩集も持ち得なかった私の怠慢と非才を、すでに先生は看破られ、警告されていたのだ――その先生のお奨めで小説に転じた私に詩作の余裕はなかった、などとの弁解は、詩と創作の二刀流でもって、斬って斬って斬りまくられた先生に通じるべくもない。(「あとがき」より)
目次
序詩
◆九月の詩
◆一日の一パーセントで生きている
- 還ってきたひと1
- 還ってきたひと2
- 金沢
- 一日の一パーセントで生きている
- 星の王子さま
- さくら
- 犬
- 満月
- 死ぬその少し前
◆雪かとおもふ
- 雪かとおもふ
- そのひとのことをおもふと雪がふってゐる
- うみやまの歌
- よる
- ほたる
- 針
- 菊
- かや
- 掲示
- 森林
- 亡き児の歌
- おまへはかへってきた、夏、まだ星の消えない朝に
- 背にゐるユリ
- 産院(拾遺)
- 兄の友人(拾遺)