2008年11月、土曜美術社出版販売から刊行された伊藤浩子の第1詩集。装幀は長島弘幸。
本詩集の最初に収められている「冬」を、いつ、どのようにして書いたか、わたしはよく記憶している。 それは、雪の湖をひとりで運転しているときだった。 等間隔に並んだ青黒い電信柱を見て、わたしは無性に「何か」を書きたくなった。 それが本詩集で、2008年3月に始まり、同じ都市の8月に終わる。
その年の2月に、わたしは勤めていた研究所を辞めた。 夏には北京で(過去、最大級の?)オリンピックが開かれた。 と同時に、ロシアはグルジアに攻め入り、中東ではイラク戦争がまだ続いていた。
「蟹工船」が再びブレークし、ガソリンは高値を更新、株価は下落し、グローバルな景気の停滞は誰の目にも明らかだった。 「婚活」なんていう言葉も流行していた。2008年は、そんな年だ。 全然明るくない、誰が何と言おうと。(「夢解きの住む場所 ~あとがきに代えて~」より)
目次
- 花
- 土祭
- 楽器
- 井戸
- 陶器
- 寺院
- 少女たちの歌 春の歌
- 黄昏
- 祈り
- 少年の祈りの歌 なまえ
- 妻
- 靴下
- ジャック・ダニエルの夢 サンクチュアリ
- 海
- 夢解きの歌 ゆめのわたり
- 木霊
- 石室
- 青年の歌 からだ
- 笛
- 朝
- 眼を覚ました少女の歌 木霊の夢
- 懐かしい窓
- ジャック・ダニエルの妻の歌 樫の木
- 少年
- わたしたちの歌 海ときみときみの歌と
- 白蛇
- 名まえ
- 変化
- 兵士
- 守人
- 影
- 日記
- 終わりと始まりの歌 葬列
- 春
- 夢解きの住む場所 ~あとがきに代えて~