日本〈小説〉原始 藤井貞和評論集

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 1995年12月、大修館書店から刊行された藤井貞和(1942~)の第14評論集。装幀は井之上聖子。

 

目次

I章 神話が演じられる

  • 一、相似を<演じる> 文献にえがかれる神話/<ずらし>の論理のおもしろさ
  • 二、けがれの発生 服属のあかしとしての所作
  • 三、生む性と死 伊邪那岐命伊邪那美命の所作/殺される女神/祭祀における所作
  • 四、「わざ」と「遊び」 「わざ」を演じることの意味/歌謡をともなう「わざ」/歌壇での「遊び」/物まね演技

Ⅱ章 古事記という歴史叙述

  • 一、聖地の誕生 血が流されたところ
  • 二、原型への時間の筒のようなもの 史実と伝承/伝承の話型からこぼれる断片/原型を伝える歌謡
  • 三、歌垣での伝承において 伝承を保存する場/歌謡の原型
  • 四、大和路の即位伝承 「帝記」と伝承/「大王」と即位/「やまと」という地名
  • 五、日子の「共立」 つくられる伝承/歴代の天皇と伝承/集落の長の長
  • 六、さほびこ伝承に歌謡がない理由 禁忌を犯す愛/芸能の所作をともなう伝承
  • 七、用字、表記、成立 和語による日本文学/「ふること」の原型
  • 八、叙事と歌謡とのかかわり 歌謡の成立年代/歌謡の有無と伝承

Ⅲ章 歴史叙述の幻想性

  • 一、歴史をうたがう 清和源氏桓武平氏についての疑問/公式記録の矛盾/<歴史>への文学からの読み
  • 二、日本書紀の幻想性 七世紀の記事への疑問/<歴史叙述>の構造
  • 三、天智、天武という「制度」 史実の合理化/天皇の空位/天皇制の始発期

Ⅳ章 源氏物語と歴史叙述

  • 一、歴史をよそおう 史実らしく見せるしかけ/作者と読者との信頼関係/物語上の創造
  • 二、「例」「ためし」「なぞらへ」という方法 当時の読者の受け取り方/後代の読み/王権中心部に生み出される虚構空間
  • 三、架空の氏族をつくり出す 源氏という氏族/藤原氏系の登場人物/桐壺更衣、明石の一族
  • 四、畿内と畿外とのあいだ 古代的な空間の感覚/文字をとおして見る歴史

V章 神話としての源氏物語

  • 一、神への転生 物語としての前世譚
  • 二、物語の外部 異郷との交信/神々の世界の出現
  • 三、鎮魂のために 死者たちが物語を見下ろす/夕顔の鎮魂と玉鬘の物語
  • 四、夕顔の招霊 篝火が呼びよせる霊/継子物語の原型
  • 五、宇治の大い君の場合 結婚しないで死んだ女性の霊/形代としての浮舟と大い君の霊

Ⅵ章 物語を流れる水

  • 一、海の女、川の女 源氏物語のなかの水の女/異郷との境界
  • 二、死霊としての水 篁物語の女/水に溶ける死霊の女
  • 三、源氏物語のかさなる構造 生の原型である主人公/天女と死霊の女
  • 四、宇治川の流れ 明石の君のなぞ/異郷からあらわれる浮舟/死の水と救済

Ⅶ章 異界と生活世界

  • 一、生活空間との往還 異界を管理する者
  • 二、加持から念仏へ 仏教もののけ調伏/病人祈祷の悲惨さ/浄土思想への転換
  • 三、「菩提と煩悩との隔たり」 初期仏教の雄大な流れのなかのことば/物語がえがく「生」の世界

Ⅷ章 <幻景>の源氏物語

  • 一、源氏物語の表現力 大長編物語を可能にした理由/東アジアの文学の共通性への思い
  • 二、光源氏から藤壺の主題へ 物語の発端/「光る」と「輝く」
  • 三、天女としての女性との密会 もう一人のかぐや姫/神聖な始祖伝承
  • 四、日本〈小説〉の特性 物語の構成/物語の自由な語り
  • 五、紫上系と玉鬘系 からまりつく二種の長編/「若菜」二巻の緊張した文体
  • 六、<外部>から来る女性たち あらわれ出る女主人公/物語の活性化
  • 七、<源氏>物語の意味 二世源氏の幻景
  • 八、物語の終わり方 武士の時代への移行期/無限の思いをふくらませてゆく方法

Ⅸ章 語り物と神話

  • 一、柳田國男折口信夫と「神話」 和歌生活とその起源/神話の定義をめぐり/伝承のなまなましい原質
  • 二、「神話」はどこにあるか 昔話のかげにある神話/神話理論
  • 三、口承文学の新しい地平 中世神話としての語り物/生きている神話

Ⅹ章 執念の物語ざま

  • 一、術語の呪性をこえて 物語というはげしい精神の運動/秋成における文学の発生
  • 二、西鶴と其磧 「浮世草子」という語と西鶴西鶴模倣作品の衰弱/衰弱の果てに見えるもの
  • 三、諸道聴耳世間猿 超越者の不在と不透明さ/分有でしかない主人公たち/不透明な、結末のない結末
  • 四、雨月物語の序文 物語ざまの宿命
  • 五、「白峯」と「血かたびら」 「白峯」の文体/物語の奥に確立している主題/主題と物語との関係/人間界に向けられた作者視線
  • 六、切りひらく物語ざま 「そらごと」の神秘なやくわり/「物語とはなにか」をこえるところ

Ⅺ章 日本〈小説〉原詩

  • 一、物語学的排去と還元 「物語」という名辞のはじまり/始原の「物語」の精神のようなもの
  • 二、名辞「小説」 「物語」と「小説」
  • 三、「小説」用例二、三 古代における「小説」/「小説」と呼ばれた書籍
  • 四、異端、小説 「異端小説」と「怪力乱神」/引用書を意味する「異端」/予言を意味する「小説」/ことわざを意味する「小説」
  • 五、近世近代「小説」史 街談巷語からの意味の拡大/通俗物や中国小説を含んだ名称/小説の認識の拡大と近代

あとがき/索引

 

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