1947年7月、創元社から刊行された岡田刀水士(1902~1970)の第1詩集。装釘は南條一夫。岡田刀水士(おかだとみじ)は萩原朔太郎の高弟。
久しく沈黙してゐた詩への情熱が再び噴き上げられる。思へば詩話会員當時、日本詩人や年鑑詩集等に作品を寄せた過去は、昔の懐かしい記憶なつた。十数年もの沈黙の間、故萩原朔太郎氏から、再三、起つべきことの忠言をいただいたけれど、私はそれを果さずに頑執を続けてきた。
殊に戦争の嵐は、私の叙情と孤独とを、筆を折る処まで痛めつけた。この間の私の懊悩は激しかつあ。そして何時か再起すべきことを念じつつ遂に終戦の転機を迎へた。
私は今、青春の詩情の激しく込み上げてくるのを圧へかねてゐる。
私の過去の詩生活に関して最も恩顧を蒙つた人は萩原朔太郎氏であつた。其のために私の私的事情にまで立入つて種々御厚意を示されたことは今も深く肝に銘じてゐる。従つて氏の他界の後になつてこの詩集の刊行を見ることは、何とも泣きたい心境に置かれるのである。
幸ひ、氏との交友最も厚かつた、室生犀星氏の、理解ある助言をいただき、私は改めて、明るく未来に羽搏かうと決意してゐる。そしてこれを機会に、朔太郎氏の恩顧の萬一にも報いたいとそれのみ念じてゐる。(「後記」より)
目次
- 時計の路
- 花骨牌
- 回顧
- 風土の顔
- 歌時計
- 新年の曙
- 門標
- 桃李の路
- 手水桶
- 青い眼鏡
- 虫・鳥の辞
- 明るい時雨
- 古人の雨
- 紋章
- 思索半生
- 梅の季
- 花舗
- 雪解
- 雀と銃
- 墓
- 燈台惜春
- 黄色い地図
- 羽織
- 帰還
- 花の開期
- 仏陀の秘密
- 青い象徴
- 扇の時
- 花の月日
- 微笑の虹
- 暦
- 郷愁
- 懈怠
- 寓意
- 薔薇の沖
後記