平出隆詩集

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 1977年12月、思潮社から刊行された平出隆(1950~)の第2詩集。挿画は鈴木翁二(1949~)、装幀は菊地信義(1943~)。新鋭詩人シリーズ1。

 

 逡巡ののちにしても、こうした変則的な形で集をまとめることに手を打ったのには理由があった。
 昨年初め処女詩集『旅籠屋』をまとめにかかった際、二十歳の一年に書き留めていた乱脈の数百行が亡霊のように立ち現れてきて、これをどうするかでひどく迷う破目になった。その亡霊が「花嫁」なる巻頭所収の連作詩篇である。そしてその段になって、私は花嫁を見捨てたのだ。花嫁は婚礼前夜に流されたことになる。なにが処女詩集なものか。
 この「花嫁」連作から「旅籠屋」連作を書き始める一九七五年までの三年間、私はほとんど作品を書いていない。その陥没期の、迷妄の露頭のような二、三篇を除いて、『旅籠屋』に収められている詩はすべて、七五年からの一年間に書かれた。
 しかし、一冊の詩集を編みあげたのちも「花嫁」という作品からの憑依はうりきることができなかった。やはり詩集こそ、詩の死に場所なのかもしれない。「灰の」の句を死化粧のようにおずおずと施して、私の独身とともにここに鎮めようと思い立った経緯である。
(「あとがき」より)

 

目次

灰の花嫁

  • 花嫁Ⅰ
  • 花嫁Ⅱ
  • 花嫁Ⅲ
  • 花嫁Ⅳ
  • 花嫁Ⅴ

『旅籠屋』抄

旅籠屋

  • 微熱の廊
  • 木霊の間
  • 悲の厨
  • 碇の庭
  • 冬の納戸
  • 星宿の湯

百葉箱によって

  • 吹上坂
  • 百葉箱によって
  • 積乱
  • 海の遺書
  • 余白の凧は碧ぞら

『旅籠屋』以後

  • 天窓の思い出
  • 水晶の峠に
  • 石段の火
  • 沼と教室
  • 襤褸と海峡
  • 岬まで
  • 和布刈
  • 帰郷

平出隆論――清水哲男
あとがき

 

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