1986年、水の原社から刊行された、倉方みなみ(1914~)による三ヶ島葭子(1886~1927)の評伝。
倉片みなみ著「葭子慕情」は、葭子再評価を呼びかける思索が丘座会第二作目の本である。第一作目の新版「吾木香」は、葭子生誕の地、所沢を中心に、全国各地から申し込みが相継ぎ、刊行後四ヵ月を経ずして、そのほとんどが、人々の手にわたった。葭子再評価の動きが、九州から北海道まで広がりをみせたことはうれしかった。
予定としては、第二作目は「三ヶ島葭子歌集」詳解であったが、「葭子の生涯」を知ることが「葭子短歌」を理解しやすくすると考え、「葭子慕情」を先に刊行することにした。
思索が丘座会のこれからの活動としては、葭子の命日にあたる三月二十六日を「吾木香忌」と名付け、毎年、その日に葭子関係の本を一冊ずつ刊行して行きたいと考えている。
倉片みなみ氏の人柄がにじみ出た「葭子慕情」の文章は、葭子をより身近かなものにしてくれるはずである。
みなみ氏から、電話で次のような報告を頂いた時、私はひとつの実りを得たと思った。
「所沢三ヶ島から、短歌を初歩からやりたいという人達の希望で、指導してほしいという依頼がありました。毎月一回ですから、行ってみようかと思います」
「先日、所沢へ行って来ました。熱心な人達ばかりで、会の名前を考えたのですが、結局、『吾木香』を使うことにしました」
葭子再評価とは、葭子研究だけでなく、一方でこうした文化活動を伴いながら進むことが大切である。(「あとがき/思索が丘座会調まどか」より)
目次
序章 親子の絆
第一章 沈丁花
- 最初の日記
- 生い立ちとその父
- 生母・継母・祖母
- 日歌輪翁之碑
- ふるさと
第二章 桜草
- 師範入学
- 学生生活
- 船堀療養時代
- 船堀より上京、小宮村へ
- 小宮村小学校教員として
第三章 名知らぬ鳥
第四章 李の花
- 父との恋
- 出産と創作
- アララギ入会
- 谷町移転平温な生活
第五章 吾木香
第六章 朝顔の歌
終章 白菊の花
- 晩年の歌
- 葭子の死
- 弔問及び参列者
- 葭子残照
- 葭子再評価へ
あとがき