2002年1月、思潮社から刊行された木津川昭夫(1929~)の第12詩集。第13回富田砕花賞受賞作。
今年は希望をもって二十一世紀を迎えたが、九月十一日米国で発生した同時多発テロと、それに対する報復のアフガン戦争で、世界に前世紀よりも深刻な危機が訪れている。わが国に於てもバブル崩壊後十数年経つが、政治・経済は混乱したままである。そういう乱世の中にあって、一市民として如何に批評性をもって、ポエジイを表現してゆくかは難しい課題である。
この詩集は私の第十二詩集である。収録作品はチベット詩篇がやや古いのを除けば、この四年程に書いた作品から選んでいる。近年人間の存在に寂寥を感じ、生命力の逞しい神話的象徴性に憧れているが、作品のテーマにもそれが反映していよう。バブル社会の怨みや、人間の刑罰史を描くことで現代をみつめ直し、また詩の非在なものの形象化や、物語性の悲劇的ロマンにも興味をもった。
(「あとがき」より)
目次
I
- 寒立馬
- 巨樹幻想
- 冬の桜
- 掌の上の小さい国
- 呼ぶ声
- 山についての断章
- 仏手柑
Ⅱ
Ⅲ
初出一覧
あとがき