私の前にある鍋とお釜と燃える火と 石垣りん詩集

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 1959年12月、書肆ユリイカから刊行された石垣りん(1920~2004)の第1詩集。

 

 こんどあることからたくさんの人のお世話になって、通常なら風呂敷か鰹節のひとつもくばつて祝いとするところなのですが、何かこう、私に似つかわしい気持のあらわしかたはないものか、と自分の内面をのぞいてあれこれ物色したのですが、貧しい台所で、ご馳走したくてもわずかに書きためた詩稿があるばかり。
 長いあいだ生きてきて、たくわえらしいものはただこれだけだったのか、と思い知らされました。
 でもまあこれで、ひとつひとつの膳部をそろえて見よう、とそんなこころづもりで編集にとりかかつてはみましたものの、読み返してみると、鮮度の落ちた魚や野菜を人に進めるような申しわけなさが先に立ちます。
 けれど友だちは、そんな私をはげまして、喜んで受け取ってくれるかも知れないのです。
 いい気な話ですが、私はそうしてくばるのに必要な部数を、もう少しふやして刷りました。
 機関紙などを通じて間接に知ってもらうことの出来た、働く仲間の誰かが、貴重な労賃をさいて私の詩集のために支払ってくれるかも知れないからです。私はそのかたに前もってここでお礼を申し上げ、ここに書かれたものの中のどれかひとつでも、そのかたの心にとどまることができればしあわせだと思つております。(「あとがき」より)

 

目次

  • 原子童話
  • 雪崩のとき
  • 祖国
  • 感想
  • 挨拶
  • 天馬の族
  • 夜話

  • 百人のお腹の中には
  • よろこびの日に
  • 白いものが
  • 今日もひとりの
  • 私の前にある鍋とお釜と燃える火と
  • 落花
  • 日記より
  • 会議
  • 女湯

  • この世の中にある
  • それを見るのは
  • 0
  • 海とりんごと
  • 悲劇
  • 盗難

  • 三十の抄
  • 屋根
  • 犬のいる露地のはずれ
  • 貧乏
  • 夫婦
  • 月給袋
  • 風景

  • 用意
  • 私はこのごろ
  • ひめごと
  • この光あふれる中から
  • 不出来な絵
  • ぬげた靴
  • 風景
  • その夜
  • 落葉がみんな私に

あとがき


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