1956年3月、東京創元社から刊行された田村隆一(1923~1998)の第1詩集。装幀は勝呂忠(1926~2010)。解説は鮎川信夫(1920~1986)。
田村君の詩集「四千の日と夜」は、戦争を通って生きて来た若い人の良心の記録である。若い人だけが持っている、抵当に入ったり加工されたりしていない、いわば、純粋といってもいい良心で、著者は、この世の置き場に苦しんでいるようだ。『死』がたくさん登場してくる、それが理由だ。この世代の青年の良心を知らずに素通りしたのでは、僕らはこの荒涼のあとから灰だけを掻くことになる。「四千の日と夜」を、詩人文士でない人たちにもぜひ一読をすすめる。(金子光晴)
ここには現代文明の病患を、もっとも鋭く感じ取った一人の詩人が立っています。現代を一つの全体的な欠如として、死からさえも見放された一つの絶望的な状態として、意識することから、田村氏の詩は出発しています。このような状態において、はげしい渇きを覚える者が、いわば現代の詩人であります。またそのようなはげしい渇きにおちこんでいる人だけが、田村氏の詩に、大きな共感を見出すことが出来るのです。(山本健吉)
目次
Ⅰ
- 幻を見る人 四篇
- *
- *
- *
- Nu
- 叫び
Ⅱ
- 腐刻畫
- 沈める寺
- 黄金幻想
- 秋
- 聲
- 豫感
- イメジ
- 皇帝
- 冬の音樂
Ⅲ
- 四千の日と夜
- 十月の詩
- 正午
- 再會
- 車輪
- 遠い國
- 細い線
- にぶい心
Ⅳ
- 一九四〇年代・夏
- 立棺
- 三つの聲
恐怖への旅 鮎川信夫