1961年4月、飯塚書店から刊行された小松郁子(1921~2009)の第3詩集。カバー画は長新太(1927~2005)。
小松郁子さんについでは、その詩以外にはほとんど知らない。会ったのもついこの問、現代詩の会の総会のときである。総会もおわりぎわになって、彼女はがらんとした一角にひとり腰かけていた。
小松さんの詩集はこれで三冊目である。最初の詩集をいただいたあとで、ぼくは『現代詩』に彼女の作品をすいせんしたが、小松さんは問違えて、詩学に作品を送ってしまった。そそっかしいところもある入らしい。ぼくは詩とこういうところとを見くらべてユーモアを感じた。
詩人とは、その生涯をかけて、一篇の長篇詩を書いていろようなものだ。小さな一作一作を月々の雜詰に発表しても、見すごされることもあり、刺戟のつよい作品がまわりにあれば目立たないこともあるだろう。詩人の個性は、うすっぺらな月刊誌にはさまって、かなしそうにひと月の間辛抱してしまうのだが、ある日、人は一冊の詩集を発見し、そこに溢れるはつらつたる作者の詩生活に驚き、あらためてその名をつぶやいたりするのだ。小松さんのこの詩集を読んだとき、きっとそういう感慨を持つ人が多くいるにちがいないと思う。
(「解説/あざやか々一つの個性/菅原克己」)より
目次
蝶たち
小さな部屋
- サボテン
- 夜
- 観衆
- 小さな部屋では……
- 奇妙な街
- 街
- 王さまとひとびと
- 王さまとひとびと
- おんな
- 錯誤
- 浅茅ヶ宿の女
ラウラ
- そのこと
- 一回きりのこと
- 今日
- 女房
- ゼラシイ
- 収集マニア
解説 菅原克己
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