1989年12月、花神社から刊行された牟礼慶子(1929~2012)の第4詩集。装画は吉原英雄(1931~2007)。
詩誌に属さず、依頼を受けて書くことも極く稀であったここ十年ほど、心に根ざしたことばがゆっくり育って行くのを待ちながら、少しずつ詩を書き続けてきました。時間に縛られず、随意に書き述べた詩は、詩的独白とでもいう体の、自分自身に言い聞かせる声を書き取ったものがそのほとんどであるように思います。
この数年の間には、最も身近にいた弟との別れに始まって、大切な人を次々に失う哀しみに遇いました。鎮魂の思いを込めた数篇の詩のあとの巻末の一篇は、楢崎汪子さんが生前刊行された『手紙』に書いたエッセイですが、多くの励ましを受けた日日を偲ぶよすがに、ここに収めることにしました。(「あとがき」より)
目次
- ことばの冠
- 優しい記憶
- 五月の森
- 異端
- 草ということば
- 秋の眺め
- 沈黙のありか
- 遠くの庭
- 見えないだけ 少女*に
- どのことばよりも
- 幸福な名前
- 雁が渡る
- 時の輪 *に
- 残りの夏 **に
- 薔薇は枯れて ***に
- 明るい冥界への手紙
- 失われたことばたちへの手紙
あとがき