1986年11月、文藝春秋社から刊行された阪田寛夫(1925~2005)の短篇集。装幀は山高登(1926~)。
二十歳をすぎた頃から、小説家になりたいと思っていた。友人と同人雑誌を始めたのが二十四歳の年で、最初の号に載せた作品は、小学校五年生の私が宝塚歌劇を一度見て心をとらえられてしまい、月見草の咲く砂の白い町にある若手男役スターの家の前を行きつ戻りつしたあげく、呼鈴を押して逃げる話であった。
処女作が作家の命運を決定する、という説がある。また、小説家というものは結局処女作に向って加筆訂正を重ねているに過ぎない、という説もある。ここに集めた小説を読み返しているうちに、右の俗説を思い出した。(「あとがき」より)
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あとがき