港の人 北村太郎詩集

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 1988年10月、思潮社から刊行された北村太郎(1922~1992)の長篇詩集。第40回読売文学賞受賞作品。2017年9月、単行本未収録詩篇4篇と平出隆による解説が付いた新装版が出版社「港の人」から刊行された。

 

 八年前から住んでいる横浜市中区はおもしろいところで、同じ区内で住居を一度変えましたが、ちょっと歩くと旧競馬場(現在森林公園)や牧場、畑地があったり、また、下町ふうの商店街や歓楽街が点在したりしています。ここに住んでいる人たちにとって、港は物心両面での支えのようにみえますが、ぼくにとっては、つねにひとつの象徴でした。なんの象徴かは、しかとわからないのですが、たいそう具体的な抽象であって、官能的であるかと思うと、まったく無愛想な、ある変幻する存在です。
 この詩集は、「現代詩手帖」一九八八年一月号から六月号までに連載した「港の人」二十三篇のうちから二十篇を選び、これにほぼ同じか、近い期間に作った十三篇を加えて、再構成したものです。〈港の人〉とは、気まぐれなぼくであり、また、ぼくとはまったく別の人でもあるようです。
 22ページの一行め、「弔問客は蒼蝿ばかり」は三好豊一郎寒山詩戯訳」から引きました。また、62ページの三行め、「a grief ago」は、むかし読んだディラン・トマスの詩にあったように記憶しています。
 一九八八年八月 北村太郎
(「あとがき」より)


目次

1 (暑い朝)
2 (どんなに想像力ゆたかな人でも)
3 (にんげんはことばを発明したときから)
4 (都市は輝いてみえる)
5 (弔問客は蒼蝿ばかり)
6 (時間がくるくるまわって)
7 (無は一つみたいだけれど)
8 (窓が震えている)
9 (あの子がぼくに鏡をくれたのは)
10 (閉所恐怖があり)
11 (ひどく冷たい強風なのに)
12 (とくににんげんは)
13 (過ぎ去ったよろこびは)
14 (古ネズミはチーズを食わない)
15 (いまは)
16 (おなかをこわす)
17 (元町の)
18 (雪の海のうえから)
19 (どのくらい前?)
20 (ごく薄くマーガリンをぬったパンを食べながら)
21 (朝の光がさしこんできても)
22 (現象を)
23 (からだが)
24 (黄が緑にちかいように)
25 (だれも見ていないから)
26 (あんなにもしっかり眠っていて)
27 (ガラス窓のすぐ向こうに見えるクスノキの部分)
28 (ジンチョウゲがにおう)
29 (坂道を)
30 (むかし船員になりたいとおもったことがあった)
31 (手帳に書いた予定の日が)
32 (いかんせん 骨の白きを)
33 (なにか滴るような音がする)

あとがき


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