蛍草 結城信一

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 1958年12月、創文社から刊行された結城信一(1916~1984)の長編小説。題字は畦地梅太郎(1902~1999)。「螢草」は第25回芥川賞候補作。「轉身」は第26回芥川賞候補作。「落落の章」は第29回芥川賞候補作。

 

  私は肉體的に不幸な宿命を負った一人の人間を、長篇小説として描いてみたいと永い間考へてゐた。それには私自身の映像の斷片、もしくはそれに近いものを持ってくるのと同時に、かなりの虚構が必要でもあった。それがなくてはこの小説は成立だなかったし、私自身は、この一巻を書上げるために生き、そのために多年の苦行的な生を生きてきたもののやうな氣さへしてゐた。その生の中に、いつとはなしに抒情の芽が宿り、次第に膨らみを加へて行ったが、私は遑にそれを捨てることが出来なかつたし、またこれはおそらく捨てられるものではないやうであった。
 私は雑誌に發表したときのものに、殆んど修正や加筆を施すことを避けて、ここにこの一巻を編むことにした。この場合、その方が結局は正しいやうだと思ったからである。
(「あとがき」より)


目次

  • 序の章
  • 轉身
  • 螢草
  • 柿ノ木
  • 落落の章

あとがき


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