ざくろ 上村弘子詩集

f:id:bookface:20180104213416j:plain

 1971年9月、昭森社から刊行された上村弘子(1932~)の第1詩集。著者自装。

 

 庭の数本のざくろが、芽吹き、花を咲かせ、実を結び、四季の扉を開閉する。私は、窓辺のざくろと語り、慰められ、あるいは、仲違いをしながら、三年の歳月をひとりの部屋で暮してきた。柔らかい風や、冷たい風が、季節と関係なく訪れ、そして通り過ぎていく。私はそれを、ひとりの女の生きてきた足跡として、詩わずにはいられなかった。
 出来あがった作品は、尊敬する村野四郎先生にみて頂きたくて、先生が選をしておられる婦人雑誌に送り続けた。
 昭和四十二年から、他の雑誌の選者に変わられたのを併せて四年間、毎月欠かさず投稿した。一か月に二篇としても、百篇近くになる。推い原稿用紙を想像して、申し訳なく思う日もあった。
 詩のむつかしさが解り始めたころ、「村野四郎全詩集」が発刊された。私は、まず友人から借り、長い時間をかけてノートに写した。書き写し、読み返すうちに、村野先生の詩の深さが解ってきて、自分の詩に対する思い違いに戦慄を覚えた。村野先生の詩には、なに気ない言葉のなかに、脳髄までも感動させられるものがある。今ではこの詩集が、私の一番身近な愛蔵書となっている。
 師と仰ぐ村野先生に、序文を頂くことができて、この上もない光栄である。厚くお礼を申しあげます。
 詩集「ざくろ」は、貧しい作品の集りではあるが、一篇一篇、私の分身のような愛着を感じる。私に、詩集発刊の勇気を与えてくださった、諸先輩、友人たちにも、心からお礼を申しあげたい。(「あとがき」より)

 

目次

序 村野四郎

  • 女湯
  • 女のなかで
  • ざくろ
  • ざくろ
  • 花二題
  • 履歴書
  • 誕生日
  • 狂っている
  • 別離
  • 脱出
  • 出発
  • 密室
  • 臓物屋
  • くらげ
  • やどかり
  • 死の形
  • 山路
  • 白根山にて
  • ある頂上
  • 風景
  • こうちゃんと海
  • 春の海
  • 初秋
  • 雪みち
  • 早春
  • ふるさと
  • 採寸
  • 失語症
  • ラッシュアワー

あとがき


NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索