2002年10月、ワニ・プロダクションから刊行された下村康臣(1944~2000)の遺稿詩集。著作権継承者は妹の松本多美子。
今年の二月、無事、北大の慰霊塔に納骨することができました。真冬だというのに札幌の町は全くといっていいほど雪がありませんでした。ホテルから時計台をそして兄の働いていた薄野の町を歩くと、冷たい風にのって懐かしさと優しさの匂いがするのを感じます。中島公園・豊平川・町を走るキックボード・角の金物屋・クレープを焼く異国の人そしてバッカスビルの小さな事務所・山盛りの大根サラダ、思い出が私の中を通り抜けていきます。兄はちょこんとまあるい帽子をかぶって笑っています。
私は私の存在に対して筋を通したように感じています。不幸の感情はありませんので、どうか安心してください。
下村康臣
このたび仲山清様のお力をいただき『鰐組』の発表作品をまとめることができました。兄が「ぽくの希望として、可能ならば」といっていたものです。三冊という大きなものになってしまいましたが、これが下村康臣の最後の本になると思います。
二〇〇二年九月 妹 松本多美子
(「詩集出版にあたって」より)
目次
- 北見家の人々
- 泣くこと
- 冬の女
- 触れるための
- 河床
- 地上
- 北見家の娘
- 公園から来る男
- 庁舎の池の傍で
- 猫その他
- 海の町で
- 黄金岬
- 半島
- 小樽駅下る
- 八木邸のガーデンパーティ
- 小田急線
- 江の島
- 竹芝桟橋
- 4丁目プラザ前の夕暮れ
- 人生
- マラソンの日
- 海・横浜・もう一歩
- 敢て料理のようにという
- 黒い袋
- 人を殺す唄
- 水の唄
詩集出版にあたって 松本多美子
関連リンク
ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ(下村康臣)
子午線 原理・形態・批評 Vol.5(特集 下村康臣)