1994年10月、砂子屋書房から刊行された宮内憲夫(1940~)の詩集。装本は倉本修。
人間が、一番幸せな時代が、いきなり昔話に成る時こそ、一番不幸な時代ではなかろうか。不幸と百えば、現代詩の読者が詩人だけという昨今も、不幸な時代だと思わざるを得ない。一般的に難解と言うよりも、本人だけが妙に納得している喩の羅列や、芯のない言葉だけの思想の幕を縦横無尽に張りめぐらせて、悦に入っているからだろう。作品の中から自然ににじみ出る思想が、一般読者にも直に伝わってこそ本物と言えるのではないのだろうか。大声で叫ぶのは、自作の力不足を補うためばかりで、本当に叫ばねばならぬ芯意はすでに喪失してしまっている。多弁のみで芯意を書けない詩人は死人同様であるが、世渡りだけは実にうまい。世渡り下手な私など詩人と呼ばれなくても、いっこうにかまわない。この一巻もまた、詩人より詩に無縁の人々の目に一人でも多く触れてもらえたら、この上ない喜びと思っている。
(「あとがき」より)
目次
- 芯音流道
- 鬼の行く道
- かくれんぼ残道
- 独り道
- 独立芯道
- 夢道
- 一寸のことへの道
- のんびり道や
- 遅れ道
- 世紀末コンコース
- なつかしき宙道
- 大事回帰道
- 冬螢の道
- 足心道
- 不明の旅路
- 後世残道
- 板さんの道
- ぶうふら憂道
- 沈黙する春の泉道
- 大成長道
- 幻の清流道話
- 旅の終道
- 野良犬同根道
- 殺人未遂道
- 理髪師の道
- 他言無用道
- セールス無道
- 日本昔話恐道
- 死語の道
- ほむら道
- 問われる者の道
- まっぴらごめん道
- 真相分明道
- 虫のいどころ道
- 一張羅道
- ある、人生道
- 運地道遠
- 外道
- 道草伝説
- 母袋道
- 現代猫鼠道
- 問答無道
- 世紀末道
- 履歴書道理
- やさしみの道
- 曲水の道
- 権威後道
- 始道
- 魂、破道
- 待てば海路の日和道
- 肝胆の後悔道
- マンガ家への道
- 道妨げ
- 迷い語道
- 窒息道記
- 音便断道
- 儂ゃ知らん道
- 音する坂道
- 迷える道子
- 毋袋白道
宮内憲夫への手紙 角田清文
ぬいぐるみを着た詩人の肖像 長田大生
あとがき