1980年11月、思潮社から刊行された山本普二の詩集。
この詩集についての打合せで、四月初め、久々に山本さんと会い、新宿の中村屋で歓談した。
おだやかな人柄で、私のようなせっかちな人間をもなんとなく落ちつかせてくれる。長野のご自宅では音楽教室を開いておられるとのことだが、いい先生だろうと思う。
山本さんは高野喜久雄さんの詩に深く影響されたようだが、そこに山本さんの資質の核が思われる。
山本さんにとって詩は、噴き上げであるらしい。天上志向と呼ぶべきものがある。空とか山についての詩にその志向が感じられるが、「登頂」と「山頂にて」の二篇がこの詩集の初めに置かれているのも象徴的だ。木も、天を目差す形象であり、湖水でさえも、空を映し空を凝視するものとしてとらえられる。
(「跋/吉野弘」より)
目次
Ⅰ
- 登頂
- 山頂にて
- たそがれ
- 空に
- 風がもってくる雪
- 深夜の木に
- 木立に
Ⅱ
- 死について
- 扉
- 愛について
- 一筋の白い道に
- そのさびしいひびきを聞きとり
- 極月に
- 実らないで
Ⅲ
- 霜月の舞台
- とざされた冬
- 祝祭
- しおりに
- 子に
- 四月・さおりに
- 子に
- 曇日
Ⅳ
- 春
- 追憶の秋に
- 果樹園にて
- 黄金詩
- 草原にて
Ⅴ
- 野
- チューリップ
- みずき
- 湖水
- 空
- 詩に
跋 吉野弘
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