1981年5月、土曜美術社から刊行された菅原克己(1911~1988)の詩論集。装画は著者、装幀は加藤幾惠。
日々のかなしみ
朝、起きて 詩の続きを書いた。
詩の言葉に溢れると
みんな消して
また眠った。
何をぼくは、ぼくの中から
えりわけようとしているのだろう。
すでに詩は、
遠く自分のさきの
何かを探すようなものだった。
陽は明るく照っていたが、
樹々の枝葉は動かなかった。
何かが得られるだろうか?
たとえば
鳥が飛びたつとき、
樹々がそよぎ、
ものいわぬ物たちが
死んだこどものように
話しかけるとき......。
ぼくは眠りながらいつも、
それらのものの影を
いっぱいチラつかせているのだが
目次
序詩――日々のかなしみ
Ⅰ
詩の鉛筆手帖
- 1言葉の向うのもの
- 2日常の中の未知
- 3書きはじめのころ
- 4最初の歌のように
- 5約束ごと
- 6永遠の願望
- 7朝のノート
- 8日常の椅子
- 9訳詩集『海』
- 10〈無名詩集〉の話
- 11戦争中の詩
- 12〈先生〉の思い出
〈日にひとつの詩〉の試み
Ⅱ
- わが詩集を語る
- 眠りたまえディドンよ
- 私の顔を返して下さい
- こどもの詩
- わが詩、わが夢
Ⅲ
- 野間宏の詩
- 詩人の勝利
- 夢と反逆の来歴
Ⅳ