1981年11月、新潮社から刊行された足立巻一のノンフィクション。大阪の夕刊紙「新大阪新聞」の創刊から廃刊まで。季刊誌『歴史と文学』に発表したものを大幅に補筆。装幀は櫻井昭治。
第一詩集『夕刊流星号』のあとがきで、これを散文で記録したい、と書いたのは一九五八年十一月であったから、きょうまでかなり長い時が流れたことになる。実は何度も書こうとしながら、 どうしても書けなかったのである。 《夕刊流星号》と仮りに呼ぶ夕刊新聞社にわたしは戦後十年あまりを勤め、その時期は第二の青春期にあたっていて、わたしなりに理想と情熱を凝らしたつもりでいた。そのために辞職してからも《流星号》に深い愛着を持ちつづけ、反面強い憎悪も抱いていてその気持ちの始末がつかなかった。筆力の乏しいこともあったが、それが書けなかった一番大きな理由である。
ところがそのうち、理想と情熱を凝らしたつもりだったものが実は卑小なことであり、自分のふるまいが下劣なものであったとしきりに自省されるようになった。そして、小さな新聞がたどった運命を、一編の戦後の記録であるとともにひそかな懺悔録のつもりで書いてみることにし、ようやく書き終えた。
(「あとがき」より)
目次
第一章《われらの新聞》誕生と隆盛
- 占領下の発刊
- ロンドン・タイムズめざして
- 横型新聞
- 七名の報道部員
- 同人たちの夢
- ローマ字時代
- 〈闘牛大会〉と〈欧洲名作絵画展〉
第二章 新聞界の難民
第三章 基地に建った新社屋
- 大新聞からの合併案
- 小共和国の夢
- 謎の印刷所
- プレス・コード廃止
- 破防法案成立
- 大新聞の進出と陰謀
- 専売店制の確立
- 編集局長辞任
第四章 零細新聞社の運命
- 窓のない新編集局
- 転変する社内人事
- 紙面低下
- 学芸欄の消失
- 給料遅配
- 市井の事件相次ぐ
- 社長交替
第五章《われらの新聞》の最期
- ヤクザ介入
- 煽情的新聞記事へ
- 大新聞、二億円の景品提供
- 不当販売競争
- 売買された報道
- 社長拘留
- 発刊十年めの崩壊
あとがき
関連リンク
足立巻一著『夕刊流星号―ある新聞の生涯』に描かれた戦後史(阪急沿線文学散歩)
回想おおさかの夕刊紙 新大阪新聞最後の編集局長が綴るあの頃
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