残りの半分について 大西美千代詩集

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 1998年9月、竹林館から刊行された大西美千代(1952~)の第4詩集。装幀は水口洋治。

 

 前の詩集を出してから、十年が経とうとしています。もう、詩集は出さないつもりでした。いつからか、詩は書き終わったとたんに私自身の関心を離れるようになっていました。ですから、そのように書き上げた詩をあえてもう一度まとめる必要性は感じなかったのです。
 この十年の間に、父を亡くし、旧友を亡くしました。父の発病から遅れて一年後に父と同じ病名で私自身も入院、手術を経験しました。この詩集におさめた詩で描こうとしたものは、父の死であると同時に私自身の死であり、また親しい友人の死でもあります。
 人が必ず死ぬということに若い頃は思い至りません。そして、逆説のように聞こえるかも知れませんが、だからこそ若い頃は、暗い思いを抱えたまま暗い日々を過ごすことが出きるのです。
「人生の半分」について、若い頃に友人と話し合ったことは事実です。それはまだ、人 生というもののほんのとばぐちにいた頃、性は生に直接つながっていました。
 たぶん、「残りの半分」は、清澄な明るさに満ちています。死というものが他人事ではなくなってはじめてわかる明るさです。人と人との関係を大切に思うようになりました。そのこととこの「明るさ」とはどこかでつながっているのでしょう。
 出さないつもりだった詩集をまとめる気になったのは、現在参加している同人誌「橄欖」の人たちの励ましがあったためです。そして、それとともにせめて一度くらいは、身近な人々に感謝の心をこめて、今の私にとっての生をきちんと伝えたいと思い立ったためでもあります。
(「あとがき」より)

 

目次

  • おだやかな町1
  • おだやかな町2
  • 残りの半分について
  • ひき出し
  • 眠れない夜
  • 吉田さんの話
  • 天の恵み
  • 無力
  • アルバム
  • 待合室
  • 昨日の水死体
  • 九匹のくらげ
  • とても淋しい
  • 「もうじゅうぶんだ」
  • 夏の庭
  • 回転するイカ
  • あらためて
  • 冬のローズ館


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