1977年12月、めるくまーる社から刊行された明峯明子の詩集。
「いまはそんなぐにゃぐにゃした詩は流行らないのよ」といいながらも、晶子は本を創ることを勧めます。多分、私が何十年もの昔からときたま書いては筐底に秘めていたもののあるのを知っていて、娘はあわれんでくれたのでしょう。とり出してみれば改めてその窶しさが目立ちます。流行おくれの衣服のように。彼女のようにこういう感傷的なものに対して拒絶反応を示すのが、ことに今では当りまえのようです。けれどもそれにも拘らず「出すことに意味があるので内容は今更いっても仕方がない。陽にさらせばそれはひとり歩きして自分から離れていってしまう。そうすれば変ることもできる」と彼女はいいます。今更という気もしますが、新しく出なおせればうれしいことです。とにかく今は、原稿用紙の束をおそろしい気持で見守っています。けれど一方、こういうふうに歩いてきてしまったことは否めないのです。悔恨ばかり多いのですが。
私は比較的若い頃に父や姉妹その他のひじょうに大切な人を失いました。また最近は相つぎ夫、母そしてもうひとり若い親しい方を亡くしました。生涯私を支えてくれたいまは亡い人たちへの挽歌となり得るなら、この本の意味も辛じてあるかなどとも考えてみます。
詩とよべるものかは別として、長年にわたっての貧しいひとりごとに、もし目を通して下さる方がありましたらその方に心から御礼を申しあげたいとおもいます。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ むかしのうた(1938~1949)
- 夏の昼
- 冬の昼
- 夏
- ふるさとの家
- 出発
- ある窓辺で
- 夜更けの窓
- 夏の日に吹く秋風は
- 夏―妹に―
- 新年
- あじさい
Ⅱ 雨のテラス(1953~1962)
- 雨のテラス
- 古い五月
- 水色の窓
- 落葉
- 父の部屋
- 日々の憂いは
- 風のように
- 五月
- 在りし日
- 手
- ゆく夏
- 夏の蝶
- 秋の蝶
- 荒地野菊
Ⅲ かたちのない――(1962~1968)
Ⅳ 小さな椅子 (1976~1977)
- 夏の終り
- 小さな椅子―ある絵の椅子―
- 新年Ⅰ
- 新年Ⅱ
あとがき
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