2014年9月、思潮社から刊行された藤原菜穂子(1933~2020)の詩集。藤原は斎藤庸一夫人。
本詩集はここ十年余(二〇〇二~二〇一四)の間に発表したものから選びました。二つの章から成っています。3・11以後の作品九篇をI、それ以前のもの十四篇をⅡに。Ⅱの十四篇は詩誌「アンブロシア」に拙著『永瀬清子とともに』(二〇一一年、思潮社)の連載をはじめたとき、その傍らに書きつけてきたものから選り出しました。この十年ほどの作品をまとめたいと思い、それにはあと少し書き加えねばと考えていた矢先、突然の大震災に襲われました。足もとが崩れ仄かな糸がぷつんと切れてしまいました。
さまざまな事が重なり、心身共にバランスを崩してあきらめていたのですが、3・11から三年、ここに来て詩集をまとめたいという気持ちが呼び覚まされました。IとⅡの間にひびが入っています、それを塞ぐことも取りのぞくこともできないのですが、その儘に随いました。前詩集『森のなかの食卓』(一九八九年、地球社)以来二十五年経っています。前方には深い霧が渦巻いています。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 白鳥
- ヒヤシンス
- 一本の藁
- 二〇一二年二月
- 少年野いちご 老婆
- 山鳩
- 竜胆
- ここからフクシマです
- 夏井川に沿って
Ⅱ
- 渚で――ミコノス島にて
- 幻の子供
- 金雀児(エニシダ)を手折る女
- ボスポラス海峡
- 銀杏が散っていた
- ぷれぜんと
- 雀と姫りんご
- 冬の朝
- 午後の会話
- 運河のほとりで
- 山の上の病院は
- 水瓶の水
- 野の花
- 一日、南の風が
あとがき