1993年8月、みすず書房から刊行されたロジェ・グルニエ(1919~2017)によるアントン・チェーホフ(1860~1904)の評伝。翻訳は山田稔(1930~)。
人はそれぞれ他者のうちにおのれの額廃的傾向の反映を見ようとするものだ。ましてやこちらが作家の場合はそうである。事実、私にはなんとなくわかるのだ。作家というこのかなり特殊な人種がどのように考え感じるか、そのあたりの精神の機微が、もの書きは一作 また一作と、神のみぞ知る者にむかって暗号のメッセージを送りつづける。未知の人間によって解読されるのを恐れ、かつ願いながら、
目次
- チェーホフを読んでみたら?
- 感謝のひとこと
- 経歴
- 秘密
- 人間の血
- 不可能な旅
- 家長
- 裁判を間近に見て
- 筆のはやさ
- 長篇か短篇か
- 死の街
- 傾向作家アントン
- 自殺
- わが聖者中の聖者
- タガンローグ再訪(一八八七年四月)
- モクスワヘ! モクスワへ!
- 人間にはどれだけの土地が必要か
- 愚かさ、憤り、憐れみ
- 手帖
- 夢の人生
- 文学賞……
- ……そして成功
- 文学上の好み
- 美女
- 「あなたを愛しています」
- ミューズのスカートの下には
- なにか悲しい曲をやってくれ
- 風景
- 三人の女と六人の男
- 観客の面前でパーン!
- ほらごらん、雪が降っている
- 返信用切手
- 舞台への情熱
- 哀れな連中
- 医師チェーホフ
- サハリン・マニヤ
- 墓地とサーカス
- ロシヤン・ルーレット
- 近視
- スターリン
- 聖ペテロ
- 小犬を連れた男
- アレクサンドラ
- かもめ
- 傷ついたかもめ
- 中西部(ミドル・ウエスト)のチェーホフ
- 番をする女
- 月夜
- 結婚生活
- 大佐
- ただ一つの物語
- エヴゲーニャ・ヤーコヴレヴナ
- どうして信仰など持てよう
- 後世
- 黄金伝説
- ヴォルテール風の凱旋
- 氷
- 時間
- 無重力状態で
- チェーホフが笑っているただ一枚の写真