1991年6月、編集工房ノアから刊行された島田陽子(1929~)の第7詩集。
十数年前の秋、愛の憧れと苦悩をうたった若い男性の詩集に出会った。現代には少なくなった、甘美で、透明なその抒情が、私の中で表現を待っていたものの導火線となった。私もまた、ひとつの物語を希求していた。虚実のあわいを縫って、女のある年代の昏さ、愛しさのようなものを形にしたいと思っていたのである。
六年ほどの間にポツリ、ポツリと発表したものを、しかし、なかなかまとめることが出来なかった。今回、ようやく〈森ヘ〉の章を編むことが出来てほっとしたが、古い作品に対する気恥ずかしさが多分にある。
〈くさのまち〉はユートピア幻想を担わされたまちの譚(はなし)である。より光を求めて、ひとは闇を一層深くするようだ。
(「あとがき」より)
目次
森へ
- 予感
- ビートルズ・エイジ
- オルフェ
- 負い目
- 撃つ
- 水に降る雪
- 海図
- きみは……
- 視線
- 森へ
- 薔薇のように
- 迷う
- 最終バス
- もてなし
- 嫉妬
- からくり
- 街で
- にんげん
- 花が落ちる音
くさのまち
- 入口
- くさむら
- 住民票
- 博物館
- 流行
- 抜く
- コミュニティ チェスト
- カード
- くさのまち語
- 骸骨
- 言弾
- と 思っていた
- 匂い
- 紅すぎる花
- くちべっぴん
- はつたけ
- 泳ぐ
- 名づける
- とる
- 草市
- 出る
あとがき