1992年9月、河出書房新社から刊行された小島信夫による原石鼎の評伝。1990年版の増補。
前から考えている漱石と虚子の違い、散文と韻文の違いについて俳句をめぐって書きはじめたが、虚子にともなって現れた原石鼎が面白くなり、その人と俳句とを辿ってみた。
明治の終りから大正にかけて俳句というものに光明をあたえたのは石鼎であった。それも十分に理解されていたかどうかは別として〈風雅〉の道をうけついだというにふさわしい作風によってであった。この本は、石鼎が生涯にわたってめざましい大俳人であるということ、その彼がなぜ忘れられていたか、ということに焦点があった評伝になった。
(「帯文/小島信夫」より)