風葬墓からの眺め 花田英三詩集

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 1994年9月、ニライ社から刊行された花田英三(1929~2014)の第7詩集。版画、装幀は名嘉睦稔

 

 今の住まいの西側の縁からは百八十度以上の角度で海が見えるが、私は殆ど海を見たことがない。余り見たいとも思わない。
 私は殆どいつも性的に興奮している。
 湿気がひどい毎日の中で私には殆ど友人がいないし、庭はあるが、花は滅多に咲かないし鳥も飛んで来ないのだが、希望はある。それがないとやっていけない。
 よくメモを取る。昨日は、男女の性器について各国語で何というか調べてメモした。太平洋の熱帯の島々の言い方が(部族によってそれぞれ異なるのだが)概して気に入った。私は立ち上がって踊り、かつ原語で卑猥な歌を歌った。
 部落の人たちは概して私に不親切である。
 それでいて、誰かしら庭伝いに入り込んで来ては勝手に冷蔵庫からあれこれ取り出して料理し、私にもすすめ自分も食べていく。
 私のそばで寝ていく人もいる。
 私は好き嫌いが激しくなる。
 どっちみち私は乱暴になる。
 それでも、ただ生きていられれば御の字という人となら何となくうまくいく。
 たまに海辺を散歩したってどうということもない。
 この前、難民船が浜に乗り上げていたが、何だってこんな所に来るのか理解に苦しんだ。
(「後書1」より)


目次

  • 吉屋チルー
  • ポリネシアの島のどこかで
  • 神さまというのがなつかしくて
  • わけがわからなくなってきた
  • 老いたけものは
  • 亜熱帯
  • [時々、後頭部の上に……]
  • [ばあさんや、……]
  • [あたし、夢って……]
  • [ガジュマルや……]
  • つぶやきおとこの最後のつぶやき

後書1
後書2


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