1969年に刊行された小谷伝の詩集。装幀は山口哲夫、イラストは木原明。目次なし。
詩を書くことは、私にとって、一面単純な欲望の充足行為であり、他面自虐的な苦行でもある。言いかえれば、およそ何物からも自由でありえない自分の〈鎖ズレ〉のような患部をなめてやるふうでその実、つつきとがめているといったところか、所詮、鎖をくいちぎろうという狂気(?)に欠ける。おまけにその行為も生来のものぐさから折角やってきたエモーションをやり過してしまうことが多い。従って一旦は熱くなって見得をきるようなつもりでまとめたこの小冊子が、醒めてみればまったくテーマ不在の〈詩モドキ〉のアルバムに過ぎなかったと知れ、いささかうんざり気味である、かの狂気に陥いり牙をむくことこそが私に必要であるのに……。(「あとがき」より)