1969年11月、思潮社から刊行された福井桂子の第1詩集。福井は三木卓の妻。
わたしたちのひとしく生を受けているこの時代に、もしもわたし自身の感受していることを完璧に表現しおおす詩、詩人をもつことができるなら、怠惰なわたしはけっして自分で詩を書こうとはしないでしょう。ほんとうに、わたしはそのような詩また詩集をもったと思えたとき、二七歳のころ詩を書くのをしぜんにやめました。しかし日々の営みのなかで、わたしはわたしでしかないというおそろしく単純なことに、再び気づかなければなりませんでした。そしてまたほそぼそと、詩を書きだしました。
この詩集は、一九五八年より一九六九年までのわたしの作品のほぼ全体であり、制作年順に配列しています。「狂詩・M嬢」「二つの詩」「金婚式」は未発表ですが、他は「河」「詩組織」「P」等の同人誌に発表したものです。
なにもかもかんまんなわたしの、これが第一詩集となります。
(「あとがき」より)
目次
- 空の男
- 縄
- カルテ
- ビールを飲もう
- 無調
- 女の顔
- るつぼ
- 女の学校
- イルクーツクつましい生活
- 狂詩・M嬢
- 悼むうた
- くまだっこ
- 谷間
- 長い長い物語
- 緑の塀のなか
- 優しい大工
- 岩の森
- 丘の上の家
- 山越え
- 二つの詩
- 熱病
- 金婚式
あとがき