天明太郎 連続ラジオ小説 NHK編

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 1950年10月、寶文館から刊行されたNHKラジオ小説。

 

 序

 本書に收めました「天明太郎」は、ラジオ小説として放送された作品です。
 從來、NHKの放送番組中に「物語」といふ種目があって、これは文藝作品を、一人の演者が語り、作中にある會話體の部分も、その人物になって一人で語るのでありますが、この「ラジオ小説」といふのは、地の文章は一人の演者が語るが、作中の會話體の部分は、幾人かの他の出演者でセリフのやりとりをしながら筋を進めてゆくといふ、言はば「物語」を立體化した種目であります。
 いはゆる、讀んで味ふ文章、眼で見て味はふ文章を、耳で聽く文章としての味はひを出しながら、しかも、放送劇的立體感と躍動感を出さうといふのが、ラジオ小説のネラヒです。
 以前にも「ラジオ小説」といふ種目があって、文藝作品を大體このやうな形式で、放送したとともありましたが、現在の「ラジオ小説」は、前記のやうな主旨のもとに、新たな構想で、昭和二十四年四月から、放送されて來ました。
 そして、放送のために特に執筆された作品、またはラジオ小説に適した既發表の作品を、一ケ月四回乃至五回、連續で放送して來ました。が、果して聽取者の嗜好にあひ、中でも最も好評を博したのは、この「天明太郎」です。
 これは、前途有爲な一青年が、自分の天職を求めて、世の荒波と鬪ふといふ筋を、現文壇の最前線に活躍されつつある八名の作者が、リレー式に書きおろされたもので、第一部は、昭和二十四年十一月から十二月まで八回にわたり放送、その第一回目は石坂洋次郎氏、以下、村松梢風林房雄尾崎一雄・徳川夢聲・佐々木邦・宮内寒彌・坂口安吾の諸氏が、順を追って執筆。
 第二部は、昭和二十五年八月から九月まで、やはり八回にわたり放送。その第一回目は、林房雄氏が執筆、次いで、村松梢風佐々木邦・徳川夢聲・石坂洋次郎・宮内寒彌・尾崎一雄の諸氏が執筆、最終回は坂口安吾氏に代り、林房雄氏が再び執筆されました。
 この「天明太郎」第一部・第二部は、將來放送番組中、重要な位置をしめるべき「ラジオ小説」の代表的なものでありまして、このやうな名作品を得られましたことは、前記八氏の、この番組に對する竝々ならぬ御協力の場と信じ、ここに深甚なる謝意を表するものであります。

 昭和二十五年五月
 日本放送協會編成局長 春日由三

 

目次

序 春日由三
第1部

第2部

 

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