1995年11月、卯辰山文庫から刊行された和田知子の随筆集。
『藍』は、私の初めての文集である。折々に書いたものを、いつかまとめてみたい、還暦のときに、などと夢みていたが、それもとうに過ぎてしまった。
今年の秋は、亡夫の満十五年忌に当る。何とか無事過ごしえた感謝のしるしにしたい思いもあって、ようやく決心することにした。
いざとなると、恥ずかしさが先立つが、これも句作とは別に、私の歩いてきた道、自分の始末の一つのつもりでもある。
内容も雑多、書いた時期もまちまちなので、一応、四つに分け、各文末に、その年月、掲載誌等を記した。「のびる」は、東京女子大学同期生と、卒業以来四十年間つづけている「のびる会」で、毎年一回出している文集である。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 古今の秋冬秀句
- 杉田久女の俳句
- 橋本多佳子の匂い
- 季語の効用――桂信子における季語
- 山のこと海のこと――甲斐の山々、そして九十九里浜
- 季語の魅力――日野草城の作品に触れて
- 蕪村の春
- 平成元年の秀句――心惹かれるままに
- 切字について――蛇笏作品にふれて
- 蛇笏の四十代
- 俳句雑感
- 好きな吟行地――馬事公苑
- 一日という時間
- 不思議な縁
- 題詠について
- 吟行について
Ⅱ
- 高橋淡路女――その若き日をしのぶ
- あの日のこと――悼室生犀星
- 歳月――岸秋渓子先生を送る
- 三島由紀夫氏の死
- 尾崎一雄氏を悼む
- 一期一会――東畑精一先生
- 曼珠沙華――入江相政氏を偲ぶ
- 春の星――川口晃さんのこと
Ⅲ
- 韓国への旅
- 中国への旅
Ⅳ
- 二題――月見草/母の手紙
- ある服の思い出
- 露のあとさき
- 父祖の地広島
- 『戦艦大和ノ最後』
- 榊の話
- 革の匂い
- 三島龍澤寺
- 流灯会
あとがき