2000年6月、土曜日術出版販売から刊行された前田新(1937~)の第5詩集。装幀は林立人。
詩集『十二支異聞』を上梓してから五年が過ぎた昨年、五冊目の詩集の発行を考え、準備をしていたが、六月に思いがけない病いで伏し今になった。その病床のことなど、私事を題材にした詩を差し替えて編んだ詩集となった。孫の誕生や死についてなど、漠然とした老いが見る心象風景の素描が点在するのは、ありふれた自然の成り行きなのだろう。これまで私は社会性に軸足をおいた詩を書いてきたが、この詩集は期せずしてテーマ主義の気負いが抜けたものになった。
詩集の表題にした「秋霖のあと」という詩は、脳梗塞に襲われた病床で書いたものだが、その詩のなかで思ったように、この詩集に収録した詩全体が老いに向かう通過儀礼として遭遇する日々の出来事に、備忘のためにつけたキャプションのようなものと言えなくもない。そういう意味では、老いてゆく私自身のために編んだ詩集ともいえる。
(「あとがき」より)
目次
- 秋霖のあと
- 挨拶
- 宿
- 桜
- 月山
- 勲章
- 切符
- 蜻蛉
- 藁の馬
- 秋の樹
- 私の窓
- アテルイの首、わが野を飛ぶ
- 逃げた狸が残していった伝言
- いま、村に馬の首を呼ぶ
- 病 待初
- 田植えの終わった晩の宴
- 初孫
- 待人
- 病床記 1
- 病床記 2
- 病床記 3
- 病床記 4
- 病床記 5
- 病床記 6
- 病床記 7
- 鹿の詩
跋
あとがき