1970年1月、雪華社から刊行された串田孫一のエッセイ。著者自装。
これは放送原稿に若干手を入れてまとめたものである。NHKでは、現在も「自然とともに」という番組を続けているが、私は依頼をうけて毎月一回三年以上その手伝いをして来た。録音機を持って山みちを歩き、海辺を歩き、湖の畔で何かおもしろい音はきこえまいかと構えているのは興味のある仕事ではあったが、時々非常につらくなることもあった。
それは歩くのがいやになるのではなく、山へまで仕事を持ち込んで来たことがたまらなくいやになるのだった。その気持は、「仕事で登る山」という題で書いたことがある。
日本の自然を、その季節季節に紹介して来たことになるが、変化のはげしい日本のことであるから三四年のあいだにかなり容子が変ってしまったところもあるに違いない。
しかしおかげで方々旅をすることは出来たし、自然の勉強も進められた。ひとりで歩いたことも何度かあるが、一緒に旅をし、それを放送にまでまとめて頂いた中坪礼次さん、佐々木城さん、伊藤和明さん、そのほか録音の際に骨を折って下さった方々に感謝の気持を抱いている。そして放送を聴いて下さった方々から、毎回放送原稿をまとめて本にするようにと言われていたが、やっとそういう形になった。
放送原稿、特にこの「自然とともに」の原稿は、自然の音を多く使っているために、よほど手を加えないと、本にしにくいので、それが面倒でのびのびになっていた。それがどの程度に出来ているかおかしなところがところどころ残っているかも知れない。
また、コースの所要時間など、気ままに歩いているので、あまりお役に立たないかも知れないがおゆるし願いたい。
ただ自然を求めての旅を好まれる方々には、少しは参考にして頂けるようなこともあるかと思い、あとは目をつぶってしまうことにした。
(「あとがき」より)
目次
一月
二月
- 黒潮の岬
- 奥武蔵の尾根と谷
三月
- 早春の譜
- 南会津の山
四月
- 残雪の富士
- 春の旋律
- 大菩薩の道で
五月
六月
- 徳本峠
- 初夏の上高地
七月
- 安倍川をめぐる山
- 栗島の一日
- 夏草の茅ケ岳
八月
- 夏山の画帖
- 高原の旅
- 戸隠の夏雲
九月
- 念場ヶ原の初秋
- 風立ちぬ
十月
- 北八ツ便り
- 西湖の畔
- 牧場の秋
十一月
- 日光の谷
- 湯元から手白沢へ
十二月
- 三国峠を越えて
- 吹雪の沼沢沼
あとがき
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