2005年7月、ミッドナイト・プレスから刊行された井上輝夫(1940~2015)の第4詩集。装幀は宇佐美圭司。
詩を作るとはどういうことなのだろう。答らしきことは「詩と『ある』ことと」のなかで述べたように考えてはみたものの、逃げて去る詩の神をしかと掴めないまま詩を作りつづけてきた。そのことで助けられるし、苦しめられもしてきたように思う。とはいえこのことはとりあえずまったくの私事である。人に見てもらうという動機をふくまない。
けれども、詩は私事であると同時に、詩を愛する人々に読まれ批評されることを望んでいると見える。ことばそのものが私をこえた存在だからだ。
そんなわけで久しぶりに詩集を出そうと思った。四番目の詩集になる。ここに含まれた詩篇はおそらく古風な響きをもつ、つつましいものにちがいない。そんな響きがどこまでとどくか分らない。それでも新たな始まりであってほしいと願う。
(「あとがき」より)
目次
- ソネット三篇
- 一、浮かれ
- 二、行方
- 三、栗
- さみだれ塚
- 夕餉から
- 九頭竜にそって
- 冬ふみわけて
- 一、せめて、今日は、……
- 二、頬をぬぐってゆく……
- 三、ふかまる大きな秋
- 四、潮風は……
- 五、「咲くや」と呼ばれる……
- 六、畑宿は小雪まじり
- 七、月は、逢引の……
- 八、ひとつになる幻を
- 九、澄みきった冬空に……
- 十、われらみな
- まりあ・そふいあ
- ことば
- 夜
- 子
- 栄光
- 別離
- モホンク・マウンテン・ハウス
- 一、ある秋の日のこと
- 二、クリスタルの湖に……
- 三、窓ガラスを赤くそめる
- 四、「精神の労苦に……
- 五、なお恋している
- 六、マホガニーの卓上に
- 七、ああ、この目が見たすべては
- 八、いまや古文書に……
- 九、いまは知る
- 十、乞いして、乞いして、
- 春の懐胎
- 玉淀
- 千千峰
- 無常
- 千鳥
あとがき