1979年3月、青磁社から復刊された真壁仁(1907~1984)の詩集。底本は1958年昭森社版。
この長ったらしい題の詩集をこんど、青磁社の好意で復刊することになった。これは二十年前の一九五八年に昭森社から出版したもので、部数はたしか五○○部くらいだったと思う。復刊にあたって、収載作品は誤植を訂しただけで原型のままとした。
このなかの冒頭の四篇は、じつは稲作農業の歴史を詩の形式で書こうと試みた詩篇の一部で、やがて書きたして一冊の史詩をつくりたいと思ったのであるが、志どうりには事ははこばず、夢はまだ完結してはいない。しかしそれは、現代の農民蔑視や米不要論に屈服したためではない。
ここに収めた詩の中には、鉄(農業機械)を招んでいる部分などもあるが、それはひどい手労働からの解放、そして高い労働生産性への期待の意味なのであって、今日のように日本の村と土とを荒らしつくし、村から農民を追い出す政策の尖兵のような機械を入れたいための予告ではなかった。書いたのは朝鮮戦争がはじめられる前の年で、戦後の日本の現実と深くかかわっている。それだけに、同じテーマは今日の状況を描くことで補完されなければならないと思っている。
けれども歴史を詩化する文学方法の問題はたいへんにむずかしく、それにたいするじぶんの非力をこの際ふかく恥じ入っているところである。
(「復刊にあたって」より)
目次
- 日本の湿った風土について
- 日本の農のアジヤ的様式について
- 十勝の機械農業について
- 朝鮮の米について
- 沙漠について
- 夜の噴水
- 黒い太陽
- 芝能
- 髪
- 罰されている愛
- 鎌倉の雪
- 峠
- 河口
- じれったい季節
- 石が怒るとき
- みどり幼く
- 弾道下の村
- 雜用的な夕暮
- 雜用的な旅
NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索