1995年4月、影書房から刊行された江間章子(1913~2005)の随筆。
『詩の宴わが人生』は、一九九一年―一九九二年にかけて、郷里の岩手日報日曜日の紙面に、連載したものです。その際一方ならぬお世話になった佐藤紀生学芸部長、黒沼芳朗次長、風情ある絵を添えてくださった海野経画伯に、あらためて感謝いたします。
原稿用紙の前では、ペンを持つと、思いもしない記憶が、つぎからつぎへと、絵のように現れ、戸惑いながらも、人間はふしぎなものだと思いました。さて、これを本にしてくださる松本昌次さん。二十五年ほど前、私たちは航空機を乗り継ぐ便を待って、雪がふるモスコーのホテルに、一週間ほど滞在していて、お知り合いになりました。そのせいか、私にはいつまでたっても、松本さんは若い存在です。いま松本さんは、知るひとぞ知る、ホンモノの文学者と親しいといわれる、まれな編集者。最近の彼の著書『戦後文学と編集者』(一葉社)をとりあげた新聞は、「作家らと編集者の本来あるべき姿の共同作業」を考えさせられる」と、ある種の感嘆さえこめた、讃辞をもって、紹介しています。こうした編集者によって、本が世に出ていくことは、私にとってこの上ないしあわせだと思わずにいられません。そして、庄幸司郎社長にも、心からお礼申しあげます。
終りに、<わが人生>などと、だいそれたタイトルをつけましたが、これは私の幼虫時代。〈詩の宴〉は、蝶と化して、詩を書いている私。これからも続くと思っていただければ、さいわいです。
(「あとがき」より)
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あとがき