春分 中本道代詩集

f:id:bookface:20190507230500j:plain

 1994年7月、思潮社から刊行された中本道代の第4詩集。絵は中西夏之。装幀は直野宜子。付録栞は吉田文憲「正午、正午の消滅」。

 

 現象は、目に見えないもの、知覚することのできない大きなものの出現に過ぎない。私たち自身が現象であるのだから、私たちにわからないのは当然かもしれない。
 秘されたものは秘されたままに顕れ出ていて、私たちはいつもそのただ中にいる。
 たとえば、夢に現れてくる知らない場所、私たちはいつそこに行ったのだろう。
 目を閉じると現れてくる様々な知らない人の顔、私はいつ彼らに会ったのだろう。
 そんなことを考える時、私たちは限りなく形を持たないものになっていくような気がする。一回限りの形態と、捉えることのできない不定形なものと、私たちはごく当然のこととしてその両方を生きているけれど、その在り様そのものが、何かの端、境界領域なのかもしれない。
 境界とは、言葉が通用しなくなる場所だ。そんな言葉が無効の場所ではじめて、詩の言葉はたち現れてくるような気がする。
 それは、言葉が避けがたく持っている詐術の力を使わないため、私たち自身を少しでも錯誤から解放するためなのだと思う。
(「後記」より)


目次

  • SummerSong
  • 波動論
  • 革のノート
  • 日本列島・1989
  • 現象Ⅰ
  •   Ⅱ
  •   Ⅲ
  • 山姥の娘の歌
  • elegy
  • 1月16日 午前
  • 都の外で
  • 滝のある山
  • 異国物語
  • 通信
  • 世界
  • Doyouhear......
  • vernalequinox
  • 変装
  • 夜の口
  • 街道
  • 妹考
  • 生命幻想
  • 母の部屋

後記

 

NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索