サンチョ・パンサの帰郷 石原吉郎詩集

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 1963年12月、思潮社から刊行された石原吉郎の第1詩集。現代詩人双書10。

 

<すなわち最もよき人びとは帰っては来なかった>。<夜と霧>の冒頭へフランクルがさし挿んだこの言葉を、かつて疼くような思いで読んだ。あるいは、こういうこともできるであろう。<最もよき私自身も帰ってはこなかった>と。今なお私が、異常なまでにシベリヤに執着する理由は、ただひとつそのことによる。私にとって人間と自由とは、ただシベリヤにしか存在しない(もっと正確には、シベリヤの強制収容所にしか存在しない)。日のあけくれがじかに不条理である場所で、人間ははじめて自由に未来を想いえがくことができるであろう。条件のなかで人間として立つのではなく、直接に人間としてうずくまる場所。それが私にとってのシベリヤの意味であり、そのような場所でじかに自分自身と肩をふれあった記憶が、<人間であった>という、私にとってかけがえのない出来事の内容である。
(「あとがき」より)


目次

  • 位置
  • 条件
  • 納得
  • 事実
  • 馬と暴動
  • Gethsemane
  • 葬式列車
  • デメトリアーデは死んだが
  • その朝サマルカンドでは
  • 脱走
  • コーカサスの商業
  • やぽんすきい・ぼおぐ
  • その日の使徒たち
  • 最後の敵
  • サンチョ・パンサの帰郷
  • 耳鳴りのうた
  • 五月のわかれ
  • 霧と町
  • ヤンカ・ヨジェフの朝
  • 狙撃者
  • くしゃみと町
  • ゆうやけぐるみのうた
  • 夜がやって来
  • 棒をのんだ話
  • サヨウナラトイフタメニ
  • アリフは町へ行ってこい
  • 絶壁より
  • 岬と木がらし
  • 酒がのみたい夜
  • 自転車にのるクラリモンド
  • さびしいと いま
  • 風と結婚式
  • 夏を惜しむうた
  • 貨幣
  • 病気の女に
  • 夜盗
  • 足ばかりの神様
  • 勝負師
  • お化けが出るとき
  • 武装
  • 伝説
  • 夜の招待

あとがき


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