オルガンの響き 江原光太詩集

f:id:bookface:20190514232807j:plain

 1992年1月、響文社から刊行された江原光太の詩集。装画は高橋三加子。解説は川崎彰彦、古谷鏡子、笠井嗣夫。

 

オルガンの響き

 あれは十歳のころだ。どもりだったせいか音楽が好きだった。作曲というより かってな節をつけて自前の歌を唄っていたのだ。オルガンに触りたくて触りたくて 放課後の音楽教室のあたりをうろうろしていた。十八穴の古びたハーモニカより 小学校に新着したオルガンに惹かれてしまったのだ。

 いまでも夢のなかで オルガンを奏でていることがある。白ペンキで塗り替えた 貧しい教育大学生の娘のオルガンのように 掘出し物みたいな色合いをしたオルガンを。それでも素敵な音をだしてくれたのだ。兄が吹きならしたハーモニカの 「ヴォルガの舟歌」や「ステンカ・ラージン」に負けはしなかった。

 ぼくのオルガンは夢のなかで 五十年も愛用しつづけてきたものだ。娘の家では こっそりピアノを弾いていても ぼくの耳にはあのオルガンの ばっふらした呆けた音が鳴り響いていたのだ。

― 一九八八・六・一〇 ―

 

目次

  • キトビロ詩篇
  • ハマボォフゥ採集法
  • 葦を刈る
  • 羅臼温泉
  • BIKKY氏の恋愛
  • 冬の梟
  • 蛙の王樣
  • ゲジゲジ
  • シサムについて
  • トンボのうた
  • 居候
  • でくのぼう
  • 身障者手帳北海道第一○九七四号
  • 黒い翳
  • 呆けの人生
  • ゴンボの実
  • 土偶のたわごと

  • 『飛ぶ橇』はいまも跳んでいる
  • 正月料理
  • んれん
  • 婚たり
  • 消された新聞
  • 遠友夜学校の
  • ぼくの神
  • ゴンドラの歌
  • 詩の村Ⅱ
  • 詫状
  • 海羊亭
  • 紋別
  • 大学村の森
  • 引越し先
  • 追分の駅舎
  • ブランコの服
  • 無頼派宣言
  • トラックがこないが

  • 八角三尾
  • 海外の少女からの手紙
  • ヤポン
  • Xの遺書
  • 死んでも同志
  • 手製のステッカー
  • 友へ
  • 通知書
  • 「赤レンガ」よさこい節
  • 枯葉が舞っていた
  • 第三の男
  • ゲジゲジ…〉ノ歌
  • ポロヌプで生きていたカズコ
  • ぼくの演説
  • わが女性遍歴
  • 日付のない手紙
  • カシワの葉書
  • 三里塚の空
  • 一木多触

〈解説〉
古典的な風格をそなえた詩 川崎彰彦
原野に立つ不遜な面構え 古谷鏡子
自由にオルガンを奏でてる 笠井嗣

江原光太年譜

あとがき

 


NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索