1999年2月、花神社から刊行された渡辺通子(1958~)の第2句集。装幀は熊谷博人。
ある若手の句会の帰りのことである。「女流女流っていうけれどすごい数だよね。やっぱり女流でしか詠めないドロドロした、そういうものを詠まないと駄目じゃないのかな。」「……。」
何と応えていいのか、すぐには言葉が見つからなかった。確かにそのとおりだと思う。でもそれって俳壇のジェンダーというものではないのか。現代もっと伸びやかで、自由で、多種多様のはずだ。ひとつに括ることはむつかしい。それらの価値づけはいずれ時がしてくれる。句集『鴻志』は、今瀬剛一先生に御選句いただいた平成元年から五年までの作品をまとめた第二句集である。この度ようやく上梓の運びとなった。出版まで、初めから物語があったわけではない。一冊の本に仕上がるまでを辿ると、一本の脚本になっていたのである。
俳句は、連歌の発句が独立したものである。本書の編集は、五句一組のテーマ俳句とした。一句一句は独立しているが、それらが集合体をつくることで、それぞれが共鳴し合い、ひとつの宇宙を作り出す。それは本来の連句とは違うし、詩とも違う世界である。これは、俳句という文学のもつひとつの可能性ではないかと思っている。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
- 素顏
- 三角点
- 朧
- 新学期
- イヤリング
- 遺失物
- メッセージ
- 夏休み
- 公園
- 庭景色
- 眼差し
- 海は表情を変へて
- 天城越え
- 平成異情
- 避暑
- にんげん
あとがき