1957年11月、牧神詩社から刊行された関谷忠雄の詩集。
私が詩を書きはじめたのは、中学生の頃で、多分15才位だと記憶している。それから27才で入営するまでの約12年間の詩活動が、自分としては詩に熱情を傾けた時代で、この間に、詩誌「牧神」「鯱」を編集した。
その后は、次第に、詩に対する自信と情熱を失いつつも、わずかながら詩作をつづけてきた。しかし、名はや、若い日の、あのひたむきな精魂には比すべくない。
詩集「花意無情」は、初期から、戦后に亘つての作品中、詩集「経歴」(昭和6年刊)、詩集「鯱」(昭和12年刊)に収め得なかったものの一部を収録した。
実は、私の全くの不用意から、留守宅を戦災で焼かれ、一切を失ひ、その際原稿も詩書、詩誌も、悉く灰燼に帰してしまった。このため、過去の作品は何もなくなつてしまつた。殊に、未発表の出征中の作品数百を始め、過去数千の作品を一挙に失ったことが、終生の深傷となってしまった。
従つて、本書に収録した作品は、僅かに、畏友高木秀吉兄の手許に残っていた旧作に、戦后のものを加えた拾遺にすぎない。大変不本意な作品が多い。何とかして収録したい作品名多かつたが、詩稿が発見出来なかつた。
しかし、これらの拙い作品で名、私は私なりに、愛着をもつているので、この機会に、まとめておくこととしたまでである。
(「あとがき」より)
目次
・想念
- 幼児の微笑
- 画像
- 幼虫の螢
- 菊
- 朝顔の実
- 松籟
- 亀
- 新宿風景(其の一)
- 海と女
- 暮れ方の街で
- 想念
- 朝の海
・花意無情
- 花意無情
- 雨
- 白い断崖
- 黒い脉搏
- 自分に
- 青い魚
- 系図
・赤い風車
- 十字架とバルーン
- 碑銘
- 彼
- 赤い風車
- Lowland 点出
- 食傷
- 張見世
- 風景
- 墓碑訓
- 虫歯
- 虹を亘る爬虫類
- 獲物
・妻を恋ふる詩
- 故里点景
- 美しいものへ
- 恒春園で
- 父
- 知子
- 妻を恋ふる詩
・押花通信
- 別れの歌
- 七つの画像
- 秋の雨
- 押花通信
- 巷
- 思弁の故里
- 中年
あとがき