1996年12月、夢人館から刊行されたあいはら涼の第1詩集。装幀は直井和夫。
東京郊外の新興住宅地、南町三丁目で私は育ちました。昭和四十年代から五十年代にかけてのことです。私が十四歳の夏に母は亡くなりました。その後私は自分の子供時代をほとんど思いだしませんでした。
母が私を産んだ二十七歳になった頃から、私は母がどんな人だったのかとても知りたいと思うようになりました。そして母の娘時代の親友を訪ねたのでした。「お母さんに会いたかったら鏡の中をごらんなさい」鏡を覗き込むそのしぐさの中にお母さんは映しだされているのよ」
その人の不思議な言葉に導かれ、鏡を覗き込むうちに、私は忘れていた母のことや、自分の子供時代のことや気持ちを次々と思いだしていきました。
そうした記憶のかけらを詩という形にまとめようとしてできたのがこの本です。私にとって子供時代のことを思い出すのはとても楽しい作業でした。この本を手にとった方が、自分の子供時代を楽しく思いだしてくだされば嬉しいです。
(「あとがき」より)
目次
- 留守番
- いとこ
- 川原
- お使い
- 洋館
- ぼや
- 歯医者
- ふうちゃん
- 裏山
- めだか
- ダンサー
- キッカー
- バイオリン
- ゴム段
- 教室
- 追いかけっこ
- チャロ
- せみ
- 低気圧
- 台風
- 夕方
- 家出
- 十四歳・夏
あとがき