2010年6月、本阿弥書店から刊行された栗木京子(1954~)の第7歌集。塔21世紀叢書、第165篇。
二〇〇六年晩春から二〇一〇年早春までの作品四四○首を収めた第七歌集です。
「歌壇」二〇〇九年一月号から十二月号まで、毎月三十首ずつの作品連載をする機会に恵まれました。一年間を通してのタイトルを「青い手帖の旅人」と付けた十二回の作品群は、「細身の舟」「まじなひ」の章、それから「異星の王子」から「芙蓉の前髪」までの各章に収めました。(ただし、歌集に入れなかった歌や、構成の上で初出に変更を加えた箇所がいくつかあります。)
また、「遠駆け」一連は逗空賞受賞後第一作にあたります。初出三十二首のうち、三十首を入集しました。
歌集名にした「しらまゆみ」は檀(まゆみ)の木で作った弓のことです。枕詞でもあり、「春(張る)」や「引く」などに掛かります。
しらまゆみ春の海辺に遊びたりときをり君に敬語つかひて
の一首から採りました。
異常気象にみまわれ、不況が続き、首相が次々に替わり、政権交代まであった心穏やかならぬ時代。歌集を編むべくこの時期に詠んだ歌を読み返してみますと、暗い歌がずいぶん多いことにあらためて驚きました。
ただ、そんな世相だからこそ、せめて歌集名には明るい歌の中の清新な言葉を選びたい、と思いました。伝統的な言葉のもつ豊かさに惹かれたことも、歌集名として「しらまゆみ」を決めた理由の一つと言えます。
(「あとがき」より)
目次
- 葉桜のころ
- 紙相撲
- 昼の重さ
- 遠駆け
- 裏も表も
- パンの耳
- 右腕
- 遠き泉
- 細身の舟
- まじなひ
- 昭和を脱ぐ
- 単純化せよ
- 異星の王子
- 腕は翼に
- ブナのまで
- しらまゆみ
- 大空の定規
- 楕円かがやく
- 薄荷の味
- 余れる腕も
- あやまちあまた
- 芙蓉の前髪
- 彗星の運びし水
あとがき