2003年1月、本阿弥書店から刊行された錦見映理子(1968~)の第1歌集。装幀は名久井直子。ホンアミレーベル1。2018年、『リトルガールズ』で第34回太宰治賞。
夏の終わりの雨の夜だった。歌集のためにまとめた原稿を、初めて人に見せた。中野の喫茶店で、信頼する俳人で歌人でもある岡田幸生さんの前に座って、私は緊張していた。飲んでいる紅茶がおいしいかおいしくないかよくわからないまま、黙って彼が読みつづけるのを待っていた。「ガーデニアってなに?」と岡田さんが急に顔を上げて聞いた。「くちなし。白い花」と答えると、「タイトルはこれがいいよ。ガーデニア・ガーデン」と彼は言った。歌集のタイトルをまだ決めかねていた私は、候補のひとつでもあったその言葉が彼の口から発せられたのを聞いて、なんだか興奮した。それだ、という感覚があった。
短歌を作り始めた六年前から現在までの歌より三三〇首を選び、ほぼ制作と逆年順に構成した。主に歌の初出は「開放区」誌上だが、巻頭の「庭園と熱病」は未発表最新作である。また、「婚姻届」は第四四回角川短歌賞最終候補、「Lifeisblue」は第四〇回短歌研究新人賞候補として掲載されたものから編集した。
六年間の中で、結社所属のない私にとって、インターネット上で様々な歌人や短詩系作家に出会ったことは大きな転機となった。それを契機として、超結社の歌会である「首都の会」、同じく超結社の若手勉強会である「きむの会」に参加し、また近年盛んになりつつある朗読というムーブメントに関わったことが、歌集を出すことにつながっていったように思っている。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 庭園と熱病
- 風葬と密会
- 驟雨と蜂蜜
- 白夜と魚影
Ⅱ
- 蛇の眠り
- 白い終電
- 火をくぐる
- 夕闇の家族
- 外科病棟
- 花の蜜
Ⅲ
- 暗室へ
- 魚眼レンズ
- 婚姻届
- 冬の婚
- 夜の重力
- Life is blue
あとがき
書評等