1935年9月、素人社書屋から刊行された富田木歩全集。
昨年刊行した「木歩句集」、「木歩文集」が絶版になり、丁度今年が故人の拾三回忌に當るので、記念出版として右二書を合冊して、新たに「木歩略年譜」及び「木歩に關する文献一覧」を加へ、玆に「富田木歩全集」を上梓することにした。
「木歩句集」に彼の作品から約二百句を嚴選したので、彼の代表的佳作は殆んど收録されてゐると言ってよい。
「木歩文集」は彼一代の文章をあらまし網羅した。割愛したのはほんの僅かである。
「木歩略年譜」に正確に、「木歩に關する文献一覧」に詳細に、二つともに出來るだけの努力を盡した
巻頭の短冊は、大正十一年十月『木歩慰安短冊會』を私が催した時、故人が揮毫せる編者秘藏のもので、蓋し珍品である。
私は震災で家の物一切を焼失して了つたので、これらの資料の蒐集には約十年間人知れの苦心惨憺をしたものである。決して一朝一夕の仕事ではなかつた。
句集.文集共に俳壇の絶讃を博したことは、彼の同志であり心友である編者を何んなに喜ばし、カづけたことであらうか。
然し、我が木歩は未だ未だもつと高く評價され、研究されるべきであることを私は固く信じて疑はない。
五拾年の後、百年の後に本書が持つ價値を編者に胸中深く期してゐるのである。
(「後記/聲風識」より)
目次
・評論・時評
- 私の俳句感
- 「續水巴句集」讀後感
- 冩意の主張より觀たる「懸葵」最近の傾向
- 俳壇寸感
- 俳壇事始
- 續俳壇事始
- 雅言流行に就いて
- 「水巴句帖」を讀みて
・研究
- 「猿蓑」を讀みて
- 「春夏秋冬」の研究
・評釋・句評
- 螻鳴書屋俳談(一)
- 螻鳴書屋俳談(二)
- 螻鳴書屋俳談(三)
- 近代名句評釋
- 隨筆・感想
- 金魚鉢をながめて
- 思つたこと
- 冬枯の里より
- 作家としての乙字氏
- 思ふがまゝを
- 私の觀た新井聲風
- 俳句管見
- 貸本屋のはなし
- 新年雜筆
- 續俳句管見
- 感覺批評に對する雜感
- 俳三昧裡より
- 螻鳴
- 詩型と取材と
- 私の句作當時の思ひ出
- 貧しき安居
・小品文
- 小いさな旅
- おけら焚きつゝ
- 臨終まで
- はじめて寫眞を撮るの記
- 螻鳴く頃
- 初秋日記
- 與太公
- 名猫
- 句集
木歩略年譜
木歩に關する文献一覧
後記
小傳